767部分:第百十七話 己を捨ててその五
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第百十七話 己を捨ててその五
後に残った童虎はだ。現実の世界に残っていた。その姿は。
「ふむ」
「童虎よ」
あの老人の姿であった。その彼に声をかけてきた者がいた。それは。
「勝ったな」
「御主か」
「そうだ、私だ」
シオンの声だった。古い友人である。
その彼がだ。また言ってきたのである。
「勝ったのだな」
「何とかのう」
「それは何よりだ」
友人を労う言葉であった。
「しかし御前はここに来ることはできないな」
「肉体はな」
それは無理だと言うのだった。童虎はだ。
「そちらにはとても行けはしない」
「しかし精神はどうだ」
「それはいけるのじゃがな」
精神はだというのだ。
「じゃが完全に行くことはできん」
「そうか。なら仕方がないな」
「精神、若しくは聖衣だけなら向かわせることはできるがのう」
「わかった」
童虎の言葉をここまで聞いてであった。シオンはあらためて言ってみせた。
「それではじゃ」
「どうするのだ、一体」
「精神と聖衣で来てくれ」
こう言ったのである。
「それでいいか」
「ふむ。それでか」
「そうだ、それでだ」
「わかった」
童虎は頷いた。そうしてである。
シオンに対してだ。こう言ったのである。
「ではその時にじゃ。向かおう」
「来てくれるか」
「わしもいなくては仕方ないのじゃな」
「そうした事情がある」
実際にはそうした事情もあるのであった。アーレスとの戦いにおいては黄金聖闘士は全員必要なのである。だからこそ是非にというのであった。
「やはり御前も必要なのだ」
「そうじゃな。黄金聖闘士が十二人いなければアーレスには」
「勝てはしない」
アーレスの力をよく見ていた。まさにである。
こうして話は決まった。童虎も行くことになった。アーレスとの戦いにだ。
「絶対にだ」
「そして御主もじゃな」
「そういうことだ。私はまずエリスと闘う」
シオンも己の闘いを見ていた。その闘いをだ。
「そしてそのうえでだ」
「来るのじゃな」
「そうした意味で御前と同じだな」
「ふぉふぉふぉ、神は手強いぞ」
「それも承知のうえだ」
既にわかっているというのである。
「それではだ」
「行くか」
「うむ、今からだ」
シオンは廊下を歩き続けている。戦場に向かっていた。
前にはまだ玄室への入り口すら見えはしない。赤い廊下が続くだけだ。
そこを進みながらだ。シオンは童虎に対して話すのである。
「行って闘う」
「健闘を祈るぞ」
こう告げるのだった。友に。
「勝つのじゃ」
「私は勝つ」
シオンもはっきりと言い切ってみせた。
「何があろうともだ」
「相手が神であるならば」
「その先の先を読む」
言葉に厳然た
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