時期を待て!!
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のに一変した。「出来が悪い。」「なんだこのクオリティの低さは。」「修正しなければ使い物にならん。」などという言葉を彼は日常のあいさつ代わりに浴びせられてきたのである。
彼は声をたてずに笑うと、服のポケットに手を突っ込み、殊更ゆっくりと何かを引きずり出した。ルパート・ケッセルリンクの手には真新しいWIL48の写真集(しかもセンターのサイン入り袋とじ付きの)が握られ、ルビンスキーに向けてこれ見よがしに突き出されるのを、自治領主は下目遣いに見守った。
「まったく、知ったことじゃないんだ。西暦の化石アイドルに興味を持つほど酔狂じゃないんでね。宇宙歴の奴らも古い。これからは次世代のアイドルが銀河を制すんだ。」
「なるほどな、機会が到来したとたんにローエングラム公に自分を売り込んだのか。」
ルビンスキーはむしろ感心したように論評して見せた。今まで自分がどれほど総大主教猊下から散々こき下ろされてきたか。芸能界の厳しさとやらを、プロデューサーの辛さとやらを、まだ一介のディレクターにすぎない息子に少しくらいは教えてやりたい気もする。
「すこしあざとすぎはしないかね。」
「ボルテックの低能はいずれ俺がプロデューサーの座から蹴落とす。だが、俺がWIL48のプロデューサーになるには、いずれにしてもあんたが邪魔なんだ。あんたと来たら古臭いアイドルを奉ることしか能がない男だからな。あんたを蹴落とせば他のアイドルたちが安心することにもなる。WIL48のファン基盤の強化に絶大な貢献ができるってわけだ。」
野心に燃えるディレクターは自信満々に言い放った。ルパート・ケッセルリンクとしては、自身が着込んでいる洋服から「WGE48というポンコツアイドルグループのディレクター」という古ぼけた汚れを綺麗に取り去って、真っ新な白いシャツの状態で、ローエングラム公(プロモーター兼スポンサー)と契約を交わす必要があったのだ。
「しかしな、ディレクター。」
「黙れ!!俺はもうWGE48のケチなディレクターなんかじゃない!!!」
青年の眼が血走ったが、ルビンスキーは平然と脚を組みなおし、表情を消した眼でこれまでコンビを組んできた相手の眼を見つめた。
「私はお前たちディレクターを統括するプロデューサーだ。ディレクターと呼んで何の差しさわりがある?」
「プロデューサーだと!?プロデューサーというのはな・・・!!」
わなないている手に握られている同人誌がカサカサと震え、クシャッという音とともに表紙のアイドルの顔にしわを刻んだ。今までに耐えに耐えてきた数々の艱難辛苦――取引先からの罵詈雑言、締切間際のルビンスキー(プロデューサー)からの数々の駄目出し、当のアイドルからの『え、なにあのおかっぱ超キモくない?』などという下種モノを見る様な白い目――が、彼からなけなし
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