766部分:第百十七話 己を捨ててその四
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第百十七話 己を捨ててその四
「このままこの戦いでは滅びるな」
「わしの勝利か」
「死ぬ。しかしだ」
キュドイモスの言葉がここで変わった。
「貴様もまた共になのだな」
「それで満足か」
「戯言を。貴様は勝った」
それを言うのだった。
「貴様はな」
「しかしこの技はわしもまた共に死ぬ」
こう言うのであった。
「それではじゃ」
「死ぬのか」
「そうじゃ、そうした技じゃからな」
「それには及ばん」
キュドイモスの言葉が変わった。
「それにはな」
「どういうことじゃ、それは」
「貴様は生きろ」
こう言ったのである。
「いいな」
「生きろというのか、このわしに」
「私は今にも滅びる」
天高くあがり続ける。その衝撃が二人の身体を容赦なく襲う。戦衣も黄金聖衣も最早何の意味もなかった。その凄まじい衝撃の前にはだ。
「しかしその私に勝った貴様はだ」
「生きよというのか」
「行け」
今度は一言だった。
「いいな、私から離れろ」
「残念だがそれはできん」
童虎はそのキュドイモスの言葉に返した。
「それはな」
「離れることはできぬか」
「そういうことじゃ。貴様と共に滅びる」
「ふっ、ならばだ」
童虎の言葉を聞いてであった。
キュドイモスは不敵に笑った。そうしてであった。
「無理にでもだ」
「無理にだというのか」
「道連れにするつもりはない」
こう言うのである。
「何があろうともだ」
「ではどうするというのじゃ」
「この私の最後の力を使う」
「力をじゃと?」
「そうだ。行くのだ」
今の言葉と共にだった。
童虎の全身が赤い光に包まれた。それは紛れもなくキュドイモスの小宇宙だった。
それに囲まれるとだった。童子の姿が消えていく。
「これは」
「私は私に勝った者を道連れにするつもりはない」
また言うキュドイモスだった。
「そう、決してだ」
「決してじゃというのか」
「如何にも」
それをはっきりと言ってみせたのだった。
「私の最後の意地だ。行け」
「キュドイモス、御主は」
「また会おう」
消えゆく童虎に最後に告げた言葉だった。
「次の戦いではこうはいかん」
「御主が勝つというのじゃな」
「戦いはこれで終わりではない」
この聖戦だけではないというのである。
「必ずやアーレス様の世界を作り上げてみせる」
「しかし今はなのだな」
「そうだ。行くがいい」
こう言ってであった。
「このままな」
「ではまた会おう」
童虎もキュドイモスのその言葉を受けたそうしてであった。
彼は姿を消した。キュドイモスだけが衝撃を受けていく。
そうしてであった。彼は遂に天に姿を消したのであった。
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