764部分:第百十七話 己を捨ててその二
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第百十七話 己を捨ててその二
「しかしじゃ」
「しかし、か」
「言った筈じゃ。貴様は必ず倒す」
それは間違いないというのだ。
「その為に今影達を倒すのじゃ」
「それにより倒れてもか」
「わしは倒れんよ」
それもないというのだ。
「決してのう」
「言うものだな。果たしてそうなるか」
「してみせると言おう」
童虎の影達が次々に消し飛ばされていく。確かに影達を倒している。しかしであった。
彼自身も傷ついていっていた。その傷はかなりのものだ。全身が鮮血で紅に染まり生命の危機も明らかだ。だが彼はそれでも立っていた。
「よく立っていられるものだな」
「影達は全て消した」
ふらつきもしなかった。全身鮮血に染まってもである。
「その次じゃ」
「その身体で私と闘うつもりか」
「御主ももう技を繰り出すことは容易ではあるまい」
キュドイモスを見据えていた。顔もあげている。全身傷だらけでもそれでも姿勢は毅然としてた。それが揺らぐことは全くなかった。
「出せばそれでじゃな」
「言った筈だ。今の技は私の全てを賭けた技だ」
キュドイモスもそれは認めた。
「それは事実だ」
「そうか」
「しかしだ」
また言う彼だった。
「今の貴様を倒す程度の力は残っている」
「今のわしをか」
「その程度の力はな」
あるというのだ。
「クリムゾンファングでだ。貴様を倒す」
「言っておく」
そのキュドイモスにだ。童虎は毅然として返してみせたのだった。
「わしも今最後の技を出す」
「貴様の最大の技か、その」
「そうじゃ。それを出す」
こう言うのだった。
「わしの最後の力でじゃ」
「その前に貴様を倒してみせよう」
「ならばその爪出してみせるがいい」
半ば挑発めいた言葉だった。
「クリムゾンファングをな」
「いいだろう。それではだ」
キュドイモスは童虎の言葉に応える形になった。そうしてだった。
その牙を繰り出しながらだ。彼に対して言う。
「この一撃で全てが決まる」
「そうじゃな」
「貴様を倒す」
キュドイモスの言葉は強い。
「この一撃で。何としてもだ」
「ならば来るがいい」
それを聞いても動じていない童虎だった。
そうしてだった。キュドイモスがその技を繰り出したのだった。
「クリムゾンファング!」
「今じゃな!」
その紅の爪を見た言葉だった。
爪が来た。だがそれは。
童虎の身体をすり抜けた。まさにそれであった。
「身体を!?」
「見切っていた」
そうだというのであった。
「既にじゃ」
「まさか。神である私の技を」
「一度見ればどんな技も見切ることができる」
「聖闘士だからか」
「左様、だからこそじゃ」
まさしくそれだというのであった
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