760部分:第百十六話 老いていぬ者その三
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第百十六話 老いていぬ者その三
「それこそが我等の世界だ」
「それが御主等の世界ならばそれでよい」
「いいのか」
「思うのはな」
いいというのだ。
「だが。それを許しはせぬ」
「実現することはか」
「だからこそわしは戦う」
その年老いた小さな姿での言葉だった。しかしである。
童虎のその小さな姿を見てだ。キュドイモスは言うのだった。
「その姿もだ」
「うむ?」
「真の姿を出すがいい」
こう彼に言うのである。
「貴様の真の姿をだ」
「わかっておったのか」
「わからぬ筈がない」
キュドイモスはその彼を見据えながら言ってみせた。
「それはだ」
「わからない筈がないというのか」
「そうだ、気配でわかる」
キュドイモスの言葉は続く。
「その小宇宙でだ」
「そうか。やはり外見では騙せぬか」
「私はわかる。だとすればだ」
「他の者もじゃな」
「貴様自身もわかっている筈だ」
また童虎に対して告げた言葉だった。
「それはだ」
「確かにのう。シオンにしても他の者達もまた」
「わからない筈はないか」
「そういうことだ。黄金聖闘士程度の力があればわかることだと思うが」
「隠してはおる」
童虎はそれはしているというのだ。
「しかし。察せられてはおるのか」
「薄々ではあるだろうがな」
キュドイモスはこう前置きはした。
「それでも気付いているだろう」
「左様か。ならばそれはそれでよい」
「いいというのか」
「どちらにしてもわしはわしのやるべきことをするまでじゃ」
それまでだというのだ。
「それだけじゃ」
「察せられてもいいというのか」
「隠してはおるがな。察せられていてもどうこうするつもりはない」
無駄な戦いは好まない、そういうことだった。
「さすればじゃ」
「実態を知った者は消すとでも言うと思ったのがな」
「ふぉふぉふぉ、それは何処の悪党じゃ」
今の言葉には笑って返してみせたのだった。
「そいうことは一切せんよ」
「ふむ、そうか」
「そうじゃ。そういうことはせん」
また言う童虎であった。
「断じてのう」
「そうだな。貴様も聖闘士だからか」
「聖闘士は無駄な戦いはせん」
「だからこそだな。それではな」
「今度の戦いはそうではない」
二人の言葉は今度は同じものを指し示していた。
「ではじゃ」
「また言おう」
キュドイモスは再度童虎に対して言ってみせた。
「真の姿を出すのだ。そしてだ」
「御主と闘えと」
「ここは精神世界、ならば姿を出すことも容易な筈だ」
「確かにのう」
「ならばだ。出せ」
キュドイモスはそうでなければ闘わないというものすらその言葉に含ませていた。そうしてそのうえで言ってみせているのだ。
「早くな」
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