一日副官!適声試験!!
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インハルトの腹心にして主席上級大将たるキルヒアイス提督が「一日副官」である。この調子ではやがてラインハルト・フォン・ローエングラム公自らが「一日副官」になるのではないかと、アイゼナッハは戦々恐々としていた。
そのキルヒアイス提督は、数時間の立ちっぱなしを一向に苦にする様子もなく佇んでいる。椅子を用意して差し上げなくてはと思うのだが「一日副官」である以上そんな気遣いはできないというルールになっているのだからそれもできない。
早く終わらないかな、という思いで、アイゼナッハはボリボリと顎の下を掻いた。
「従卒!」
とたんに、キルヒアイス提督の声が執務室に響いた。風のように飛び込んできた従卒に、
「アイゼナッハ提督に、熱い蒸しタオルをもってきて差し上げなさい。」
おやおや、とアイゼナッハは思った。ただ痒かったから掻いただけなのだ。だが、訂正するのも恐れ多いので、黙って好意を受けることにした。
蒸しタオルが持ってこられると、アイゼナッハは黙ってそれを受け取り、黙って自分の顔を、手を拭いた。ちょうど気分転換がしたかったところだ。これはこれでいいものだと思う。
アイゼナッハはほっとして、椅子に寄り掛かり、目を閉じた。何もすることはない。書類決済も既に終わっているし、開かなくてはいけない会議も出席しなくてはならない会議もない。アイゼナッハは目を閉じていたが、次第に退屈になってきた。まさか軍務中に寝るわけにもいかない。特に「一日副官」とはいえ、キルヒアイス提督がいらっしゃる前では。そこでデスクの引き出しから一冊の本を取り出して読み始めた。第二次ティアマト会戦で勇戦したシュタイエルマルク提督が著した「戦術論」だ。彼はそれを読みふけった。
しばらくは微風のふく執務室にパラパラとページをめくる音がするだけだった。と、アイゼナッハは鼻が突然むずがゆくなるのを感じた。吹き込んできた微風の中に何かゴミが入っていたのだろう。彼は鼻を鳴らした。
「従卒!」
おやおや、今度はなんだろう。
「アイゼナッハ提督にティッシュをもってきて差し上げなさい。」
グッドタイミングだ!アイゼナッハは思わずそう叫びたくなるほどだった。従卒がすっ飛んで持ってきたティッシュペーパーを何枚か引き抜き、鼻に当て盛大にかんだ。あぁ、すっきりした。アイゼナッハは晴れやかな顔でそれをぽいっとゴミ箱に放り込んだ。
流石はキルヒアイス提督だ。今までの「一日副官」の中で彼が一番的を得ている。残念だ、さすがに上官を自分の副官には出来ない。なによりそんなことをすればローエングラム閣下がどうおっしゃられるかわからない。
そうこうするうちに、夕刻になり、キルヒアイスの「一日副官」終了まであと2時間ほどになった。このままいけば賭けはミッターマイヤーの負けになる。
最後の最後でミッターマイヤー提督が
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