ビーター
第一章
二十五層 ボス ケルベロス
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彼の声で多くの隊員が突撃する。しかし、その判断は間違いだった。
「ガァァァァァァゥ!」
ボスが一際大きく吼え、纏う雰囲気が豹変する。
体力ゲージが満タンまで回復し、名前までもが変わる。
ヘル・ビースト…地獄の獣だ。
「まずい……!」
俺たちはすぐに後ろに退き、防御姿勢をとる。
その直後、
「ギャゥァァァァァァ!!!!!」
叫びが響く。
余りの威圧と音量に全員がたじろぎ、大きな隙が生まれる。そこを見逃さぬよう、ヘル・ビーストは追撃を仕掛ける。鋭利な鉤爪でキバオウを除くALSの隊員のほぼすべてを切り裂いた。一瞬で体力が減少し、消滅してしまう。フルレイドの約半数に当たる20名を一撃で失ったことにより、レイド内に大きな波乱が広がる。
「くそっ!転移!アールイー!」
「転移!」
「転移!」
半数で勝てるわけがない、そう考えたものたちが離脱を始めた。
どうする……せめてキリトとユウキたちだけでも逃がして……
「ぁぁぁぁ……ぅあ……」
不意にユウキのかすれた声が聞こえ、後ろを振り向く。
そこにはいつもの彼女の姿はなく、恐怖にうちひしがれ、立ち竦む少女の姿だった。
「リーダー!危ない!」
「ッ!?」
ナギの声で我に帰り、ヘル・ビーストの攻撃の直撃を避ける。
一瞬で多くのプレイヤーを殺した鉤爪の威力は、かすっただけでhpの3割を削られたことで嫌と言うほど理解できた。
「ハァッ!」
「ずぉりゃ!」
不意に、二人の男の声が響き、ヘル・ビーストがそちらを振り向く。
「エギルさん!ヒースクリフさん!」
そこには大きな得物ときらびやかな鎧を纏った二人がいた。
「こいつは俺とヒースクリフで引き付ける。ツバキは回復をしろ。」
「ああ。」
言われるがままに俺はポーションをがぶ飲みする。
決してうまいわけでもないが、自身にデバフ消去とバフを追加してくれるありがたいポーションだ。因みに、体力は全快。
「よし……!?」
体を自分以外の重さが襲う。
「やだ……行かないで……椿まで……死んじゃ、やだ……」
切実な訴えだった。
幼い頃から育ってきた家族同然の存在を失いたくない、
という、彼女の素直な気持ちだった。
痛いほど理解できる。俺にとっても、ユウキやランは大切な存在だ。でも、俺は所詮妾の子。両親が真っ当な生活をしていなければ誰にも巡り会うことのなかった、幻の命。仲間を守って果てるのなら、文句はない。
「退け、ユウキ。足手まといだ。」
俺はユウキを乱暴に振りほどき、キリトに告げる。
「お前は逃げろ。ここからは少人数の方がいい。あと_________」
俺の言葉を聞いたキリトは力強く頷き、ユウキとランの手を引いた。
「転移!始まりの町!」
素直に引き受けてくれた親
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