遭災弁当
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対イゼルローン要塞の再奪取について連日軍議が行われ、様々な討論が行われている時だった。
ひときわ大きな異音が会議室にこだました。
「誰だ!?」
「やったのは!?」
双璧の二人が顔色を変えて立ち上がった。重要かつ神聖なこの会議場で有ろうことか屁を最大出力で放出するとはどこの無礼者かと思ったのである。
「違いますな、これは、お腹のなる音でしょう。」
そう冷静に分析したのは、メックリンガーである。
「すまん!」
そう素直に白状したのは、ビッテンフェルトだった。
「卿か。また朝飯を抜いてきたな!」
ミッターマイヤーが指摘した。
「いや、ちゃんと食ってきたぞ。フランクフルト・ソーセージをな。だがそれだけではどうにも足りん。」
また、ビッテンフェルトのお腹が異音を発した。それは左右どころから室内に響き渡るほどの怪音だった。普通の者なら失神しそうなほど顔を赤くするところだが、ビッテンフェルトは豪快に笑った。
「すまんすまん。さっきから腹が『何か食わせろ!』と抗議していてな。ミッターマイヤー、そろそろ昼だ。いったん会議を切り上げてどこかで飯を食おうではないか。」
ビッテンフェルトがそう指摘すると、双璧はやむをえんなという表情になった。
「あんな異音を連発されては会議にならん。よし、会議は昼後にあらためてすることにしよう。いったん解散だ。」
やれやれという弛緩した空気が広がり、続々と会議室を出ていく出席者の中、一人残って何やらごそごそと包みを取り出す者がいる。
「おい、ミッターマイヤー。何をしているんだ?おいていくぞ。」
「いや、ビッテンフェルト。俺はいい。持ってきているからな。」
???と一同が足を止めて、ミッターマイヤーのところに引っ返すと、若い上級大将は何やら風呂敷のような包みを楽しそうにほどいているところだった。中から現れたものを見て――。
「ほほう!」
「ほっほ〜う!」
「ふ〜む!」
「へぇ〜〜!」
「ほほっほほほう!」
と、一斉に発せられた声の先には、「愛情たっぷり!!!」というハートマークがうかんできそうなお弁当が鎮座ましましていた。一の段にはハートを彩ったケチャップがかかったチキンライスに周りにブロッコリー、にんじんなどがこれまたハート型にくりぬかれて添えられている。二の段は保温器になっており、その中にはチキン・フリカッセカレー風味が入っており、三段目には果物などが行儀よく並んではいっている。
「何ともうまそうだな!」
ビッテンフェルトが舌なめずりをせんばかりに詰め寄ってきたので、ミッターマイヤーは弁当箱をビッテンフェルトの鼻っ先から取り上げ、泥棒から守る大事な宝石箱のようにしっかと抱え込んだ。
「駄目だぞ!これは駄目だ!俺のだぞ!エヴァが俺のために作った弁当だからな!」
「チェッ!けち臭いな。少しくら
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