遭災弁当
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宰相府から到着したラインハルトは会議室に入るなり、顔をしかめ、一同の顔を見た。後からやってきたキルヒアイスも顔をしかめている。
「卿ら、何か異臭を感じないか?」
「別に何も?ねぇ、皆さん。」
アレーナがしれっとした顔で皆に言う。
「キルヒアイスはどうだ?」
「わたくしにはなんとも・・・・。」
一瞬にしてすべてを悟ったキルヒアイスだったが、皆の手前暴露するわけにもいかず、かといってラインハルトの言葉を否定するわけにもいかず、言葉を濁すだけになってしまった。
「そうか?いや、私の鼻がどうかしていたのかもしれないが、一つ風を替えよう。窓を開けよ!新しい空気を取り入れなくては、古いしがらみは追い出せんぞ。」
『御意!!』
一同が一斉に立ち上がった瞬間。ものすごい異音とガスの風圧と強烈な臭気が会議室を包んだ。それでも誰一人顔色も変えず、身じろぎ一つしなかった。
「流石は卿らだ。腐っても帝国軍人だというわけだな。」
ラインハルトが言った皮肉交じりの冗談は強烈な異臭の中に消えていった。
その翌日の昼も愛妻弁当が一同のテーブルに配られた。今回からラインハルトとキルヒアイスが同席している。例の愛妻弁当作りっこ企画がラインハルトの耳に入り「それならば私もぜひ参加して卿らの家族の作った料理を食べてみたい。」と言い出したのである。これがのちのフィオーナの番でどういう結果となるか、戦々恐々としていたミュラーたちであった。
今回はワーレンの番である。ワーレンの愛妻弁当というと皆が不思議そうな顔をする。なぜならば、ワーレンの細君は昔に死別して今は息子しかいないというのだから。
「まぁ、卿らが不審に思うのも無理はない。だが、俺の場合には愛妻弁当ではなく『愛息弁当』なのだ。」
そう、得意げに披露して一同の食卓の上に並べられたものを見てビッテンフェルトは叫んだ。
「おおっ!!ライスカレーではないか!?」
「そうね、カレーね。」
「カレーだな。」
「カレーですね!」
一同が喜びの声を上げる。カレーはいつどの時代でも人気の一皿なのであった。
「これはだな、息子が初めて覚えた料理なのだ。初めて出したときには俺の顔をにんじんやらジャガイモやらで作ってくれてな、それがまた嬉しいのだ。今でもスマホにその写真データを取ってある。」
ワーレンは得々としてその時の様子を語った。
「何でもいいが腹が減って仕方がない!食うぞ!俺は食うぞ!」
ビッテンフェルトが器を左手に取り、スプーンをあわただしくつかむと、立ち上がり、皿に口を付けて勢いよく掻き込み始めた。
「さぁ、卿らも食べてくれ!」
「おいおいビッテンフェルト、そんなにがっつかなくとも料理は逃げはしないぞ。」
苦笑交じりにミッターマイヤーがいい、一同もいただきますと声を上げ、スプーンを取り
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