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銀河HP伝説
遭災弁当
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い味見をさせてくれてもよかろうに。」
ビッテンフェルトが舌打ちしながら、それでも羨ましそうに視線を注いでくる。
「ほう、愛妻弁当とはな。卿は幸せ者だな。毎日毎晩奥方の手料理を味わっているというのに、外に出てもその楽しみがあるのだからな。」
ロイエンタールが目を細めながら言うと、ミッターマイヤーは、
「あぁ、これが俺の昼の一番の楽しみだ。毎日エヴァは違ったおかずを詰めてくれるのでな。今日はいったいどんな料理が入っているのかと毎日開けるのが楽しみなんだ。」
全開の、のろけ話に男性陣だけではなく女性陣も辟易した格好だった。
「そうだ!ロイエンタール。そういう卿も新婚早々だ。だったら作ってもらえばいいではないか?そこにいらっしゃる奥方に。」
『なに(えっ)!?』
ロイエンタールとティアナが裏返った声で唱和し、ついで気まずそうに半ば恥ずかしそうに目を合わせた。
「ええと、そのう、あの、わ、私がロ、ロイのために・・・・。」
『ほほう!!』
一同の眼に好奇の色がうかんだ。
「ほう!フロイレイン・ティアナは――。」
「家ではロイエンタール提督のことを――。」
「ロイと呼ぶんだな。」
「なんていうアツアツぶりか!」
「まったくうらやましい!小官も一度そう呼ばれてみたいもので――。」
ベルゲングリューンの言葉はロイエンタールの眼光によってしぼんだ風船のごとく消えていった。
「わ、私は別に!!」
ティアナが顔を赤くしながらそっぽを向く。
「いいじゃないティアナ。ミッターマイヤー提督の発案、いいお考えだと思うわ。」
そう微笑をたたえながら言ったのはフィオーナだった。と、彼女は何か思いついたようにぽんと手を打った。
「そうだ。こうしたらどう?これからのお昼は、皆さまの奥様の愛妻弁当を人数分順繰りに披露していくというのはどうでしょう?」
「おおっ!素晴らしいぞ!これで俺は当分卿らの愛妻弁当を毎日食えるというものだな!!」
ビッテンフェルトが快哉を叫び、他の者たちも面白そうにうなずく中、数人顔に縦線が走った者がいる。ティアナ、イルーナ、アレーナ、そしてフィオーナと結婚しているミュラーだった。
「どうしたミュラー?顔色が悪いぞ。風邪か?体調不良なのか?」
ミッターマイヤーが指摘した。
「い、いえ!何でもありません!何でも!」
「ミュラー大丈夫?」
フィオーナが心配そうに額に手を当ててきたので、ミュラーは赤くなって必死に首を振った。
「だ、大丈夫だ。すまない、フィオーナ。お腹が空いただろう。今日は外にお昼を食べに行こうか。」
「ええ。でも任せておいてね。順番が回ってきたら腕によりをかけてお弁当を作りますから。どうして今まで思いつかなかったのか不思議だわ。」
ますます顔色が悪くなったミュラーはフィオーナと共に外に出ていった。

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