第78話 新政府の苦悩
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戊申戦争が終結し、岩崎弥太郎とグラバーはグラバー邸で会っていた。
「どうやら、ミスター・坂本は誰かに殺されてしまったらしいです」
グラバーは残念そうに言っていたが、ニヤリと笑いながら岩崎に言った。
「そうか、龍馬は死んだんか。まぁ、致し方がないのぉ」
岩崎もニヤリと微笑んた。
「ですが、ミスター・岩崎。あなたは、あの計画にのりのりでしたね」
グラバーは皮肉めいた言いようで岩崎に言った。
あの計画とは日本売買計画のことであった。
「いやいや、グラバーさん。わしは、不可能じゃと思っていたぜよ。昔のよしみで賛同はしてみただけぜよ」
岩崎は大声で笑った。
「なるほど、ミスター・岩崎は坂本さんが死んでくれて清々しているようだ」
グラバーは笑ってみせたが、その目は笑っていなかった。
「ははは、それはグラバーさんも一緒じゃないですかの?グラバーさんもわかっていたはずじゃ。この計画は不可能じゃと」
岩崎の目も笑ってはいなかった。
「いやいや、ミスター・岩崎。私は面白い計画だとは思っていましたよ。日本にはいろいろ魅力あるものが埋まっている。そう、我々、外国にないものが」
グラバーは手を大きく広げ岩崎に言った。
「まぁ、しかし、龍馬を殺したのは誰なんじゃろうな?」
岩崎は綺麗に手入れが行き渡った庭を見つめてつぶやいた。
そして、政府は旧長州、薩摩、土佐そして公家が中心になり、新しく立ち上がっていた。
次々と新しい政策を打ち出し、実行していった。
藩士から領民と領地をとりあげ、天皇へ返還させる版籍奉還。そして、藩政を取っ払った廃藩置県。
今までは士農工商などと身分があったが、その身分制度も取っ払ってアメリカに習い、3権分立まで確立させていった。
「ざんぎり頭を叩いてみれば文明開化の音がする」
誰が読んだのかはわからないが、実は政府を批判してるかのように思える詩まではやりだしていた。
だが、すべてがうまく行っているわけではなかった。
武士の魂である刀は取り上げられ、土地も領民も取り上げられ、今までは身分制度があり、その特権もなくなり、貧困に喘ぐ武士があふれていた。
その為に、政府に不満をあげる者達が増えていた。そして、西郷はその者達のために武力を以て朝鮮を開国するという、いわゆる「征韓論」をぶちあげた。
だが、岩倉を中心とした木戸(旧姓・桂)そして、西郷にとって大親友の大久保に反対され征韓論は暗礁に乗り上げてしまった。
その後、西郷は任を解かれ、地元である九州・薩摩、いや最早薩摩ではいえず、鹿児島へ帰還することになってしまった。
明治6年のことである。
これにより、時代が再び動きだすことになる。
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