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Three Roses
第二十六話 叔父として王としてその十

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「捕まるものではありません」
「全くです」
「やはりおかしなものがあります」
 オズワルド公も司教も言う。
「太子が細かく指摘されていますが」
「太子の言われる通りです」
「彼等に捕まる魔女はいません」
「捕まるにしては強大過ぎます」
「そう思います、私も」
 マイラは澄み切った声で答えた。
「彼女達は冤罪です」
「冤罪だからですね」
「だからこそですね」
「捕らえさせてはならない」
「絶対にですね」
「はい、今では思います」
 マイラ、彼女のそれはというと。
「異端審問の者達は危険です」
「では動かしませんね」
「彼等は」
「勝手に動くこともさせない」
「鎖に繋いでおきますか」
「新教徒達への牽制には使えますが」
 所謂無言の恫喝だ、彼等もいるのだと相手に見せるというのだ。マイラは彼女は好きではないが政治的なこの手段も否定しなかった。
「ですが」
「それでもですね」
「下手に動かさせはしない」
「そこは気をつける」
「そうしていきますね」
「そうです、彼等は動かしません」
 マイラは二人に約束した。
「以前の私は違いましたが」
「私もです」
 司教もマイラに申し出る様にして述べた。
「彼等を使うつもりでしたが」
「それでもですね」
「はい、彼等を使いますと」
「それを口実としてですね」
「何をするかわかりません」
 実はわかっている、しかしだ。暴挙の限りを尽くすという意味でこう言ったのだ。
「ですから」
「最初からですね」
「動かしません、狂信者は危険です」
「下手な悪人よりも」
「ですから」
「動かしません」
 断じてというのだ。
「そうしていきましょう」
「それがいいですね」
「太子が動かれます」
 オズワルド公は彼の名前を出した、ここでも。
「ですから」
「あの方と共に」
「動いていきましょう」
「この国の為に」
「あの方は立派な方です」 
「はい、そしてあの方と私の子が」
「まだです」
 このこともだ、オズワルド公は言ったのだった。
「希望はあります」
「そうですね」
「はい、ですから」
「私はあの方との間に」
「お子をもうけて下さい」
「そうなる様にします」
 強い声でだ、マイラは述べた。
「この国の。そして旧教徒達の為に」
「お願いします」
 こうマイラに言うのだった。
「そちらのことも」
「はい、やはり子ですね」
「王家は続いてこそ、人がいてこそです」
「王家だからこそ」
「宜しくお願いします」
「承知しています、今夜も」
 マイラは己の責務を自覚しつつ応えた、それも強く。
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