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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十六話  不安
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もない。

「協力はしてくれるのでしょうね。今度は失敗は出来ませんよ」
『もちろんじゃ、ブラッケやリヒター達も皆協力は惜しまん。安心するが良い……』
嬉しそうに言うな、厄介な問題は直ぐに俺に押し付ける事ばかり考える。まったく碌でもない爺さんだ。

『何時頃オーディンに戻る?』
「そうですね、後二週間ほどかかると思います」
艦隊は今ヴィーレンシュタイン星系を抜けシャンタウ星系に向かっている。そこからフレイアに出てヴァルハラ星系だ。そのくらいはかかるだろう。

『戻ったら結婚式か。準備は順調かの』
「準備なんて何もしていませんよ。毎日問い合わせがうんざりするほど来るんです。宇宙艦隊はメルカッツ提督が有る程度抑えてくれていますが、ブラッケ、リヒター、ブルックドルフ、グルック……。それに憲兵隊に帝国広域捜査局……。オーディンに戻ったら彼らに捕まって身動きが出来なくなるのは眼に見えています、そんな暇は有りません」

リヒテンラーデ侯が笑いだした。
『大変じゃの、憲兵隊と帝国広域捜査局は仕方あるまいがブラッケ達は突き放してはどうじゃ』
「そうも行きません。辺境から要望書が届きますからね、彼らの機嫌を取っておかないと」

リヒテンラーデ侯の笑い声がさらに大きくなった。
「笑い事じゃありません。誰のせいだと思っているんです。みんなこれまでの政府のつけを払っているんですよ。捕虜も戻ってきますから艦隊の再編もしなければなりません。この上結婚式の準備なんて出来るわけが無い」

このまま式は無し、そういう具合には行かないだろうか。難しいよな、ユスティーナも式は挙げたいだろうし、ミュッケンベルガーもそれは同じ思いだろう。
『なるほどの、では少し手伝うとするか』

スクリーンに映るリヒテンラーデ侯が嬉しそうな顔をした。いかん、この爺様に任せたら何を始めるか分からん。
「それには及びません。自分でやります」

『派手にやるなというのじゃろう。案ずるな、ミュッケンベルガーと相談して決めるからの、それなら良かろう』
式は無しというのは出来ない、となれば誰かに任せれば楽なのは事実だ。しかしこの爺様とミュッケンベルガー?

まともな結婚式の準備なんて出来るのだろうか? 大体この二人が結婚式を挙げたのなんて半世紀近く前の事だ。参考にはならんだろう、しかし……。

「……出席者は身近な人だけにしてください。それと最終的な決定権はユスティーナが持つという事なら」
『もちろんじゃ。こういうのは新婦の意見を優先するものじゃからの』

ちょっと心配だが、ユスティーナは控えめな性格だし、彼女の言う事ならミュッケンベルガーも無視は出来ないだろう。それに俺はこういうのは苦手だ。結局はユスティーナに任せる事になる、それならこれでも同じだ。


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