第一章 天下統一編
第九話 招待
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とは思えない。それを言えば秀吉もだろうが。その人間の本性は抑える人物が居なくなって初めて現れると思う。その点で言えば徳川家康も秀吉死亡後に律儀者の皮を脱ぎ捨てている。
「相模守、一献とらそう」
徳川家康は笑みを浮かべ俺に酒杯を差し出してきた。「俺は未成年なんです」とつい口にしそうだったが言葉を飲み込んだ。この時代は酒を飲むのに年齢制限なんてない。断る言葉としては無理だな。それに徳川家康直々だから、ここで断れば興が冷めることになる。
「かたじけなく存じます」
俺は徳川家康が差し出した酒杯を手に取ると両手で支えるようにした。徳川家康は瓶子を傾け酒を注いでくれた。俺は注がれた酒を一気に呷った。酒が染みる。十二歳の俺の身体には酒は健康的に良くない感じがしてきた。
「よい飲みっぷりだ。ささ、もう一献」
徳川家康は俺の気持ちは余所に酒を勧めてきた。
「いただきます」
俺は徳川家康の申し出を断ることができず、再び注がれた酒を一気に呷った。酒が喉と臓腑を焼きそうな感覚だ。子供に酒を勧めるなよ。俺が徳川家康の顔を見ると上機嫌そうだ。
「相模守、返杯をもらえるか」
徳川家康から返杯を求められたため、俺は杯に口をつけた部分を指で拭き徳川家康に差し出した。すると徳川家康は杯を手に取った。俺は徳川家康が俺にしてくれた様に瓶子を取り、酒杯に酒を注いだ。徳川家康も酒を一気に呷った。その表情は酒の旨さを味わっている様子だった。普段は酒を飲んでいないのかなとふと思ってしまった。
「もう一献もらえるか」本多
俺は徳川家康に請われるままに瓶子を傾け酒を注いだ。徳川家康は酒杯に注がれた酒を一瞬眺めそれを一気に呷った。その間が俺は凄く気になった。単に気のせいかもしれない。
「皆も酒を楽しんでくれ」
酒を楽しむ秀清と本多忠勝を無視して、徳川家康は酒に口をつけない三名に声をかけた。本多正信と井伊直政は主君の命を受けると酒を飲み始めた。柳生宗章は酒を一杯だけ飲んだ後はそれ以上酒を飲まなかった。護衛役として流石に酒は不味いと考えたのだろう。
俺も瓶子をとり酒を飲み始めた。この流れでは飲まない訳にはいかないよね。つらい。入社したばかりで飲み会に誘われた新人社員の心境だ。この時は石田三成の部下でよかったと感じた。石田三成は無駄なことが嫌いなのだろう。飲みに誘うといったことは一切しないし、食事に誘うこともしない。だが、石田三成の部下からさっさと脱却して独立したい。北条征伐後は伊豆国主になるなら俺は中央との関わる頻度は低くなるに違いない。
その日、俺は酒を徳川家康から勧められ、断ることもできず酔いつぶれてしまい、客人として徳川屋敷に泊まるはめになった。酒好きの秀清はここぞとばかり酒
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