第一章 天下統一編
第九話 招待
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「お主が頼朝公を恐ろしいと思う理由というわけか」
徳川家康は俺の講釈を聞き終わると腕を組み深く頷いていた。
「相模守、良い話を聞かせてもらった。聡い若武者と聞いていたがここまで故実に通じているとは思わなかった。関白殿下も其の方こと鼻が高かろう」
徳川家康は平静な表情で俺のことを凝視していた。
「相模守、歳は幾つだ?」
「十二になります」
徳川家康は驚いた表情に変わる。俺も十二歳で吾妻鏡を読んで自分なりの解釈を持つ子供にあったら驚くと思う。驚くというより気味が悪いというのが正確なところだな。
「北条征伐には出陣するのか?」
「出陣いたします。今回が初陣ですので恥をかかないように心引き締めて望むつもりです」
「相模守は誰の麾下に入る予定なのだ?」
徳川家康は俺が誰の下で働くか気になる様子だった。
「内々の話ですが石田治部少輔様にございます」
「石田治部少輔の麾下か」
徳川家康は特に反応を示すことは無かった。徳川家康と石田三成の仲は険悪なのかと思っていたから以外な反応だった。秀吉が決めたことだから徳川家康が難色を示せる訳がないということもあるだろう。でも、朝鮮征伐撤兵時には徳川家康と石田三成は協力して戦後処理にあたったところをみると、現時点では険悪というほどではないのだろう。
「相模守は初陣ということであれば。無難な配置であるな。相模守、精進するのだぞ」
徳川家康は自分の中で納得している様子だった。口振りから見て俺が後方支援に回されると思っているのかもしれない。
俺にはそうと思えないんだよな。秀吉は俺に出来るだけ多くの家臣を雇っておけと言っていた。それに石田三成から渡された軍役帳は一万石並の軍役を課していた。軍役に必要な人数は集まっている。だが、不安なのでもう少し増やしたい。致命的な失態をしなければ伊豆国七万石の領地が入るから金と知行の心配はしなくていいと思っている。北条征伐は長期の戦争にはならないことはない。だから、ある程度無理はきくと思っている。
心配なのは俺の家臣団は火力に隔たっているところだ。津田宗恩は人材紹介してくれる予定だったのに返事が未だない。藤林正保にも引き続き人を探させているが、津田宗恩が人を連れてきてくれることを期待している。
「関白殿下の力になれるように心して精進いたします」
徳川家康は満足そうに頷いた。この頃の徳川家康は未だ天下を狙っているような気がしない。問題は石田三成にあるのかもしれない。石田三成が反乱を起こしたせいで、徳川家康の目の前に天下が転がってきたのだろう。天下を拾えるなら、ひとかどの武将なら掴まずにはいられない。掴まなければ他の誰かが掴むのだから。
しかし、徳川家康は用心深い人物であるから今俺に見せている印象が真実
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