第一章 天下統一編
第九話 招待
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
守は吾妻鏡を読んだことがあると聞いた」
「はい。あります」
「儂も吾妻鏡は読んでいる。それも何度もな。あの本は飽きない。相模守は吾妻鏡を読んでどう思った」
「武家の者としては大変失礼な意見と思いますが、頼朝公のことは人として好きになれません」
俺は素直に意見を述べた。ここで源頼朝を絶賛しても、俺は嫌いな歴史上の人物だから会話を続けるとぼろが出るから止めておいた方がいいと思った。徳川家康は俺の意見を聞き何度か頷いていた。
「相模守は予州公贔屓か?」
「はい。私は義経公が好きです」
徳川家康は愉快そうに小さく笑った。源義経を「予州」と呼ぶ辺りが俺が本当に吾妻鏡を読んだことがあるか引っ掛けたような感じがしなくない。源義経は伊予守に任官された。それで吾妻鏡で源義経のことを「予州」と呼称する場合がある。
「若い者には予州公の戦人振りは心躍るであろうな。私も若き頃はそうであった」
徳川家康が源義経のことが好きだったとは知らなかった。でも口振りからして過去形のようだが。でも、優れているのは源頼朝だろうな。源頼朝は己を心を押し殺し、先の先を読み行動することができる人物だ。俺の兄が源頼朝なら俺は武士の身分を捨て名を変えて農民になっていることだろう。源頼朝は利用価値が無くなれば血縁は理由をつけ粛正するに違いない。源頼朝は本当に恐ろしい男だ。
「頼朝公は恐ろしい御方です。ですが、頼朝公ほど傑物した為政者はいないと思っています」
俺と徳川家康の会話に誰もついて来れない様子だった。本多正信、井伊直政、本多忠勝は話の内容が要領を得ない様子で押し黙っていた。その中で井伊直政は面白くなさそうな表情をしていた。
「『恐ろしい』か。相模守、遠慮することはない。そう思う理由を申してみよ」
徳川家康は俺の言葉に噛みしめるように反芻すると俺のことを見た。先程までの和やか空気と違い。徳川家康は真剣な表情で俺に話しかけてきた。
「頼朝公は日の本全土に惣追捕使を配置させるために後白河院に要求されました。その名目は弟、義経公、を追討するためとしました。しかし、頼朝公は義経公をなかなか捕まえませんでした。惣追捕使は最初は畿内、そして徐々に範囲を広げていきました。そして、義経公は最終的に奥州藤原氏を頼られました」
「それがどうしたというのだ」
徳川家康は表情は平静であったが鋭い人を見定めるような目で俺をのことを見ていた。
「都合が良すぎるのです。義経公がご謀反をお越し一番利したのは頼朝公でしょう。大義名分を持って日の本を制する名分を得たのですから。そして、奥州藤原氏の討伐は前九年の役の再現にしか思えません。頼朝公の政治的な動きが早すぎる。私には頼朝公がはじめから絵図を描いていたようにしか思えないのです」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ