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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第九話 招待
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と思っている。それでも当時の状況を知ることができる一級品の資料であることは間違いない。俺も吾妻鏡は武家の心構えを学べる貴重な資料と思っている。

「孫子、貞観政要、吾妻鏡の方が好みです」

 前世で読んだことがあるから問題ない。これ以外にも愛読書はあるけど、この時代は本は中々手に入らないから徳川家康に変に思われるかもしれない。

「貞観政要で思い出しました」
「相模守、どうしたのだ?」
「唐の太宗は質素倹約を率先して実施したとあります。駿河前左大将様は貞観政要に書かれていることを手本とされているのでしょうか?」

 それとなく俺の学問好きだと自分を売り込んでみる。徳川家康は自嘲するように笑った。

「そう大した理由からではない。健康のためだ。儂は健康のために色々している。食事以外では鷹狩りが好きでな。相模守は鷹狩りは嗜まれるかな?」

 徳川家康は愉快そうに笑いながら話を鷹狩りに逸らした。彼は幼少の頃に雪斎から当時最高の教育を受けているはずだ。だから、貞観政要も読んでいると思う。徳川家康は儒学者を当用して儒教を統治に利用している。儒教は権力者にとって都合の良い学問だからな。
 秀吉と徳川家康の決定的な違いは学問を嗜んでいるかだと思う。先例に学ぶことは愚かなことじゃない。過去の積み重ねが現在であるから、今でも通用する先例はあるはずだ。その証拠に徳川家康は吾妻鏡を人生の手本にしているような気がする。その一例として後世に悪行として罵られようと豊臣家を徹底的に叩き潰した。
 だが、秀吉には先例を学び実行することはできない。彼は経験で身につけた知恵はあるだろうが学問の素地がない。学問は一朝一夕で身につくものじゃない。
 でも、秀吉は学問を身につけた者達を側に置けば解決できるだろう。しかし、その者達を上手く使いこなせる保証はない。今の秀吉は独裁者だ。有用な意見でも自分が納得できなければ受け入れることはしないだろう。秀吉の器量なら彼が死ぬまでは歴史が示す通り大丈夫だろうがな。

「鷹狩りはしたことがありません。鷹って格好いいです。一度、自分の手に乗せてみたいなと思っていました」
「そうか。鷹狩りは良いぞ。運動にもなり領民の生活ぶりを目にすることができる」

 徳川家康は鷹狩りを俺に勧めてくれた。勧めてくれても鷹匠を雇う必要があるし、今の俺には経済的に余裕がない。そんな金があればより多くの侍と武器を買った方がいい。
 そんな俺の気持ちを余所に徳川家康は何か思いついた仕草をした。

「そうだな。次に機会があれば鷹狩りに誘ってやろう」

 俺が鷹狩りに興味を持ったことに気を良くした徳川家康は俺を鷹狩りに誘ってきた。

「それは本当でございますか? 是非お誘いください」
「わかった。機会があれば必ず誘おう。ところで。相模
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