マスター現る!
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にも殴りかかろうとしているところで拳を振り上げたままの人もいる。ニアもこの空気に呑まれるように詠唱が続かず、中途半端に開いた本が寂しそうに手元で放置されていた。
と、この空気の中でも変わらず微笑んだままのミラが巨人に声をかける。
「あら……いたんですか?マスター」
「マスター!!?」
(というかこのサイズでいた事に気づかれてないマスターって何だよ、ステルス系魔法か……?)
ニアの疑問に答えはなかった。
「ち」
「フン」
「びっくりしたねー」
「ねー♪」
「酒」
睨みあう二人が顔を逸らし、ロキが女性二人を抱き、また樽の方を向き直る。それぞれ出しかけた牙を引っ込めていく魔導士達を見たニアは少し困ったように息を吐き、何やら一言呟いてから本を消し去った。
そんな中、にっと笑っている奴が一人。
「だ―っはっはっはっ!!!みんなしてビビりやがって!!!この勝負はオレの勝ぴ」
高笑いして見せるナツだが、その言葉は最後まで続かなかった。
重々しい足音を立てて歩いてくるマスターが、見えなかったのか見えていてやった事なのかは解らないが、ナツを思いきり踏んづける。背後から踏みつけられたナツは潰れたような声で俯せに倒れ伏す。
「む、新入りかね」
「は…はい…」
ぴたり、とマスターの目がこちらに向く。巨人の迫力やらナツを踏みつけた事やらがいろいろ重なって思わず声が震え、冷や汗が止まらない。
「ふんぬぅぅぅ……!!」
こちらの返答を聞くと、マスターは力み出した。歯を食いしばり、顰め面で。
その体が小刻みに震え、地均しじみた音を響かせる。その振動がギルド中に伝わって、最早涙目のルーシィが口をぱくぱくと開閉させる。隣で「顔、凄い事になってるぞ」とニアが注意してくれているが、気を回す余裕なんてない。
震える音が徐々に大きく鳴り、マスターの全身を光が包む。そしてその体が少しずつ小さく――――小さく?
「ええ―――――――っ!!?」
「え、は…え!?」
縮む、縮む、縮んでいく。
つい先ほどまで見上げても顔が遠かった巨人が、気づけば膝を曲げてこちらが見下ろす立場になる。ルーシィの膝上程に頭のてっぺんが来る、小柄な老人。二本の角が生えたようなデザインの帽子に、ギルドの紋章がプリントされた服、立派な髭。妖精の尻尾のマスターであるその人―――マカロフは、くるくると巻いてまとめた書類を片手に、空いている方の手を上げる。
「よろしくネ」
思ってたよりフレンドリーだった。巨人の時の迫力はどこに行ったのか。
「とう!!」
そのマカロフがしゅばっと音を立てて飛ぶ。くるくると全員を回転させながらギルド二階の手すりを目指し―――盛大に、頭をぶつけた。ゴチン、と痛そうな音がす
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