マスター現る!
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しまったじゃねえよド変態。出かかった言葉をニアは必死に飲み込んだ。顔を背け口を押さえて必死に堪えた。別に吐き気を催した訳ではない、断じてない。あまりの事態に呆然としたルーシィに気づかれなかったのが幸運だろう。
現れた青年―――グレイと呼ばれた彼は、上半身裸だった。というかパンツ以外何も着ていなかった。確かに今は七月だがそういう事じゃない、夏だからってパンツ一丁は頂けない。
声をかけた女性も、呆れているのか一つ溜息を吐く。
「これだから品のないここの男どもは……イヤだわ」
溜め息一つ、と思ったら、そのまま足元に置いていた樽を軽々と持ち上げた。明らかに女性の細腕では重いであろうサイズのそれを抱え上げ、テーブルに座ったまま中身を体に納めていく。漂う匂いからして中身は間違いなくアルコール、この光景にはルーシィも目が飛び出そうだった。というか軽く飛び出ている。
視界の隅で、「オオゥ!!!ナツゥ!!!勝負せェや!!!」「服着てから来いよ」と、言われたにも拘らずパンツのみのグレイと事の発端ことナツが喧嘩を始めていた。
「くだらん」
「!」
と、次は背後。二メートルはありそうな巨体の男が、低い声で呟く。
「昼間っからピーピーギャーギャー、ガキじゃあるまいし…漢なら拳で語れ!!!」
「結局ケンカなのね……」
背中には“一番”の文字。学ランを着た銀髪の男性が、特に混ざる理由はないが喧嘩の中心へと殴り込む。よく考えたら今喧嘩している人たちの半数は喧嘩する理由がないのだがそれはさておき。
「「邪魔だ!!!」」
「しかも玉砕!!!」
だが、混ざった先は中心部。いがみ合う割に息がぴったりなナツとグレイのアッパーを受け、見事に放物線を描いて墜落する。混ざった先が悪かった。
「ん?騒々しいな」
続いて現れたのは、ブルーレンズのサングラスをかけたイケメンだった。オレンジの髪に柄のシャツ、ファーの付いたコート姿。青いレンズの奥から、静かに大乱闘を見つめている。
「あ!!“彼氏にしたい魔導士”上位ランカーのロキ!!」
「何だそれ」
「週刊ソーサラーのランキングよ」
「…あんな、どう見ても顔だけの奴がいいのか?」
不思議そうに、心底不思議そうに首を傾げたニアが、くいっと顎で示した先。
「混ざってくるねー♪」
「頑張って〜♪」
(ハイ消えたっ!!!)
両腕で二人の女性の肩を抱き、だらしなく頬を緩ませた上位ランカーの姿があった。女性の方もやたらと甘い声で抱き着いている。そういった声を嫌うニアがぶるりと身を震わせ、腕を擦った。
その横でルーシィは思わず倒れる。四つん這いが崩壊したような、顔を床にくっつけた体勢で、ここにきてようやく異常さに頭が追い付いてきた。
「な……何よコレ…
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