マスター現る!
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カンだ――――!!!!」
着地と同時に振り下ろされた拳をナツはバック転で避ける。その拍子に吹き飛ばされかけたハッピーが叫んだ。
「ウホッ!!」
「ぬおっ」
が、バルカンはそれ以上攻撃を仕掛けては来なかった。それどころか地面を蹴ってナツを飛び越え、雪に足を取られたナツには目もくれず、一直線に駆けて行く。
「!?」
「人間の女だ♪」
バルカンの向かう先。そこにいるのは、足を取られながらも敵を視界から外すまいと振り返ったナツ――――を距離を置いて見ていたルーシィだった。
ホロロギウムを掴むバルカンの顔が、扉が透明なせいで真正面からはっきりと見えてしまう。だらしなく緩んだ頬、扉がなければ息がかかるであろう至近距離。伸びた舌の先が扉に触れ、そこから唾液が垂れている。
「うほほ――――♪」
「キャ――――――!!!」
ホロロギウムごとバルカンに担がれたルーシィの悲鳴が響く。
「おお、喋れんのか」
その後ろ姿を見送りながら、ナツは掌に拳を打ち付ける。
「『てか助けなさいよォオオオ!!!!』……と申しております」
ホロロギウムが代弁するルーシィの叫びが、雪山に木霊した。
そして。
「何だろう…マカオ以前に助ける必要のある奴が出来た気がする……」
靴とズボンの裾を濡らさないよう僅かに浮いたニアが、雪山のどこかで呟いていた。
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