マスター現る!
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「その毛布貸して…」
「ぬお」
まず、ナツが背負っているリュックから横に大きく飛び出した毛布を引っ張り出す。引っ張られたナツが傾いたが、気にしている余裕はない。くるくる巻かれた毛布を広げてケープのように羽織り、腰の鍵の束を掴む。その中から銀色の鍵を一つ選ぶと、寒さに震えながら腕を高く上げた。
「ひひ…ひ…開け……ととと…時計座の扉、ホロロギウム!!!」
「おお!!」
「時計だあ!!」
鳩時計の鳩を思わせる音と共に、細長いシルエットが浮かぶ。それは徐々に形を整え、置時計から腕が伸び、九時半辺りを指した時計盤の上に顔が現れる。
呼び出されたのは、置時計の形をした星霊ホロロギウム。その時計盤の下、透明な扉の中に振り子のある空間に、ルーシィはそそくさと入っていく。丁度人一人が入れるくらいのそこに入り、扉を閉め、しゃがみ込んだルーシィは何やら口をぱくぱくと動かした。
「『あたしここにいる』と申しております」
「何しに来たんだよ」
それから少し間を置いて、ホロロギウムが喋った。どうやら、外には聞こえない中にいる人の言葉を代わりに喋ってくれるらしい。
「『何しに来たといえば、マカオさんはこんな場所に何の仕事をしに来たのよ!?』と申しております」
「知らねえでついて来たのか?凶悪モンスター“バルカン”の討伐だ」
「!!!!」
ルーシィの顔が明らかに引きつった。寒いはずなのに汗が伝い、凶悪モンスターという言葉に固まってしまっている。予想外だったのだろう。
「『あたし帰りたい』と申しております」
「はいどうぞ、と申しております」
「あい」
ホロロギウム越しに吐かれた弱音に、ナツはどこか投げやりに返した。後方にいるホロロギウムを振り返る事なく、一歩進むごとに足首まで雪に埋めながら歩いていく。
「マカオー!!!いるかー!!!バルカンにやられちまったのか―――!!!」
「マカオー!!」
吹雪の音に掻き消されないよう声を張り上げる。声に合わせて吐き出された白い息が風に流れ、開けた口に容赦なく雪が飛び込んでくる。荷物の上に乗ったハッピーも呼びかけるが、返事はない。
「!」
そんな時だった。何か物音がナツの耳に飛び込んでくる。
「!!!」
猛吹雪の中でも不思議と聞こえるその音を辿って顔を上げると、曇天にくっきりと映える白い塊が数個落ちてくるのが見える。それが雪の塊で、明らかに誰かが何かして落ちて来たのだと気づいた瞬間、雪で白く染まった山の、雪の塊が落ちてきた辺りから大きな影が飛び上がった。
その飛び上がり落下してきた影は、顔が細長く耳が横に長い、猿のようなゴリラのような生き物だった。白い体毛、がっしりとした巨躯、長い尻尾、顔の造形はどことなく人間に近い。
「バル
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