マスター現る!
[17/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
揺れる度に顔色を悪くし、開いた口から苦しそうに息を吐き、この二人と一匹の中だったら一番騒ぐはずなのに、今はこの場の誰よりも喋らない。喋れない、と言った方が正しいか。
「マカオさん探すの終わったら、住むところ見つけないとなあ」
「オイラとナツん家住んでもいいよ」
「本気で言ってたらヒゲ抜くわよ猫ちゃん」
「しょうがないなあ、ニアも一緒でいいよ」
「何もしょうがなくないし解決してないけど!?」
そんな話から、適当に雑談をしていた時だった。
ガタン、と一際大きく揺れた、と思ったら、馬車が止まる。
「!止まった!!!」
「着いたの?」
途端にナツが起き上がる。顔色も一気に回復し、一気に騒がしくなった。そんな彼に代わってルーシィが問うと、外で馬を引く男が震えた声で返してくる。
「す…すんません……」
はて、何をそんなに震えているのだろう。これが冬なら寒さだろうが、今は七月でむしろ暑い。…にしては隙間から入ってくる外の空気が少し冷たい気も、しなくはない。
気になって、馬車の扉を開く。瞬間、何かが全身を叩いた、気がした。
「これ以上は馬車じゃ進めませんわ」
視界に広がる、白、白、白。山も木も何もかもが真っ白に染まっている。全身を叩いたのは、明らかに時季外れな冷気だった。純白、という言葉を馬鹿正直に再現したらこうなるだろうか。
加えて天候は荒れ放題の猛吹雪。歩き出そうと馬車から出れば、サンダルがすっぽり雪の中に埋もれてしまう。それどころか足首まで沈んでいった。あまりの吹雪に、扉に捕まったハッピーが飛ばされそうになっている。
「何コレ!!?いくら山の方とはいえ、今は夏季でしょ!!?こんな吹雪おかしいわ!!!」
吹き荒れる吹雪が全身を濡らし、冷気が容赦なく体温を奪っていく。吐く息は白く、それで指先を温めようにもすぐに息すら冷え切ってしまった。
「さ…寒っ!!!」
「そんな薄着してっからだよ」
「アンタも似たようなモンじゃないっ!!!」
荷物を背負うナツが言うが、そんな彼は上半身は裸の上にベストのみ。股下の深いズボンに黒い腰巻き、足元はサンダルで、マフラーだけが唯一防寒具といえそうだった。確かにルーシィの服装は、ノースリーブのトップスにミニスカートと雪山は明らかに不釣り合いだが、ナツも人の事を言えるような恰好ではない。
「そんじゃ、オラは街に戻りますよ」
「ちょっとォ!!!帰りはどーすんのよ!!!」
「アイツ…本当うるさいな」
「あい」
客を降ろすやすぐに帰って行く馬車にルーシィが叫ぶが、返事はなかった。
その馬車の後ろ姿も、すぐに吹雪に隠れて見えなくなる。それを追いかける気力もないルーシィは、一先ずこの場で手っ取り早く暖を取る事にした。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ