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歌集「春雪花」
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 来ることの

  なきにし君の

   温もりを

 求むや虚し

     冬の山里



 帰省しないと解っている。それでも…「もしかしたら…」と思ってしまい、自分に呆れてしまう…。

 そんな彼の温もりを…あの時、掌を合わせた温もりを思い出し、虚しさが一層濃く纏わり付いてくる…。


 彼の温もりの代わりにあるものは…枯れ果てた景色と凍える風の吹く街並みだけ…。



 白雪の

  ふりさけみれば

   夜の闇の

 想いぞ深く

     佇みにける



 ふと…足元に雪が落ちてきた…。
 見上げれば…そこにあるのは、漆黒を纏いし夜の闇…。

 そんな空から、雪は次から次へと落ちてくる…。

 吸い込まれそうな闇…落ち逝く純白の雪…。

 不意に彼と話した景色を思い出して、暫くの間…その場に立ち尽くしてしまった…。


 もう…あの頃には戻れない…。

 彼がいた時には…私が彼を愛していると気付いていない頃には…。




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