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駄目親父としっかり娘の珍道中
第81話 似た者同士は案外中身も似た者同士
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もまた、礼儀作法の一つ。これ、人としての常識で御座るよ」

 男はそう言い、持っていた三味線の弦を軽く弾いた。それに連動するかの様に絡みついていた鋼線は激しく振動し、局員たちの肉を引き裂き、骨を切断し、五体全てをバラバラに引き裂いてしまった。
 悲鳴など挙げる暇すらなかった。それを挙げるよりも前に事切れてしまったのだから。

「おやおや。随分と華奢な連中でござるなぁ。てっきり断末魔の一つでも挙げるものかと期待していたのでござるが・・・どうやら期待外れでござったか」

 男は半ば落胆したかの様な口ぶりをした。辺りに散らばった肉の塊を適当に押しのけ、高杉の前へと男は歩み寄って来た。

「随分と気合いの入った歓迎じゃねぇか、万斉」
「申し訳ござらん。どうやら拙者の熱弁が相当気に入ったようで、呼んでもいないのに追いかけて来てしまったようでござる」
「成程な、それならば仕方ないか・・・で、どうだった?」

 万斉の冗談めいた言い分をひとまずおき、高杉は話題を変えた。と言うよりは話題を戻したと言うべきだろう。彼が知りたいのは寧ろそっちなのだから。

「春雨の方は上手く行ったので御座るが・・・管理局の方は残念ながら交渉決裂してしまったで御座る」
「お前がしくじるとはな。まぁ、はなから奴らとは手を組むつもりなんざさらさらねぇ。どうせその辺りで春雨の奴らとつぶし合いをしてるだろうしほっとけば良いだろう。それで?」
「大方、晋介殿の予想した通りで御座ったよ。拙者がほんの少し揺さぶっただけで連中は見事にボロを出したで御座る」

 無表情のまま、淡々と万斉は語る。彼にとっての収穫はこのネタだった。そのネタこそ、高杉が求めている最大の功績とも言えた。

「桜月の”本体”はやはり、管理局が保有しているようでござる」
「そうか、道理で江戸中探し回っても見つからなかった訳だ」
「ですがご安心を、どうやら連中はまだ桜月を使いこなせてはいないようでござる。まぁ、連中では到底桜月を扱う事など出来ないで御座るが―――」
「あれを扱えるのは世界広しと言えど『アイツ』一人しかいない。無論、白夜を扱えるのもな」
「紅夜叉・・・で、御座るか?」

 万斉の問いに高杉は動かない。だが、その表情からそれが答えだと言うのは察する事が出来た。常に狂気に満ちた顔をしていた高杉の顔から一瞬だが、その狂気が消えた。それが何よりの証拠となる。
 
「かつて、攘夷戦争最強と謡われた伝説の剣士。二本の妖刀を自在に操り、戦場を舞い数多の天人達を切り裂いてきた紅き鬼神。噂では、あの白夜叉すらも凌駕するとか―――」
「奴だけじゃねぇ。恐らくこの世に生きてるどんな奴でも、あいつには勝てないだろうよ。無論、俺達でもな。あいつの強さは次元が違う。一生掛かったって追いつけねぇだろ
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