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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十五話 辺境星域視察
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」
私の疑問にキスリング少将は考えながら答えてくれた。あの事件は最初に辺境基地に在ったサイオキシン麻薬の製造基地を叩いた。そして販売ルートをたどりサイオキシン麻薬の売人を押さえ購入者を捕らえることで製造者、販売者、利用者の全てを撲滅した。
「最初に軍のルートを叩きました。その後に売人、常用者から他のルートでサイオキシン麻薬を手に入れていないかを聞き出し、あればそのルートを叩いた。その繰り返しです」
……なるほど。徹底的に叩いた、というのはそういう事か。しかしそうであれば供給先が別ルートでも摘発を逃れたとは思えない。
「有り得るとすれば、供給先が別で売人も購入者も自分達で用意した場合でしょう。一切他の売人、利用者と接触させなかった。会員制のクラブのようなものです……。しかしそのような事が有り得たのか……。安全かもしれませんが、利益はあまり出ない、採算が取れるとも思えない……」
「会員制のクラブ……、つまり閉鎖的ということですか?」
私の問いかけにキスリング少将が頷いた。閉鎖的か……、となれば……。
「キスリング少将、少将は我々第六課の前身が何か、お気付きでしょう?」
キスリング少将は一瞬躊躇った後答えた。
「……社会秩序維持局、ですね」
「そうです」
社会秩序維持局、帝国内でこれほど評判の悪い組織は無いだろう。帝国臣民を弾圧し監視し続けた。前年の内乱ではクーデターを起そうとし、憲兵隊に潰されている。内乱終結後に組織は取り潰された。多くの人間が喝采を挙げたはずだ。
しかし国家が有る以上、国家を危うくする存在を監視する組織は必要とされる。社会秩序維持局は潰されたが消滅したわけではなかった。名前を変え、権限は遥かに縮小されたが帝国広域捜査局第六課として存在している。
「社会秩序維持局は一度地球教について調査をしています」
「それで」
「大した事は分かりませんでした。調査と言っても形式的でおざなりなものだったようです。ただ、その中で気になる事が書かれていました」
「気になる事ですか……」
「ええ、地球教は極めて閉鎖的な宗教であると。宗教なら採算は度外視するかもしれません。そうは思いませんか?」
「……」
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