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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十五話 辺境星域視察
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ンゲルト子爵が胡散臭そうに見ている。
「この場しのぎではないでしょうな」
「そんな事はしませんよ、クラインゲルト子爵。ただ一度に全てを実行するのは無理です。政府は帝国全土に対して改革を行わなければならない。辺境星域だけを特別視する事は出来ません」
「……ではどうされるのかな」
「こちらへの要望に対して優先順位をつけるか、あるいは複数を同時に進めるのであれば作業の工程を決めてください。その上でどの程度の費用がかかるのかを調べて政府に提出して欲しいのです」
「……なるほど」
クラインゲルト子爵が他の三人の顔を見た。お互いに視線を交わしていたがどうやら納得したようだ、皆が頷いている。
「分かりました、そうしましょう」
「御願いします」
その瞬間、官僚達がほっと安心するのが見えた。そしてクラインゲルト子爵の顔が皮肉な笑みを浮かべる。
「閣下、我等の要望書ですが閣下に提出しますが宜しいでしょうな」
「……結構です、問題はありません」
何で俺? そう思ったがこの時点で断われば彼らの信用を失うだけだろう。つまりこの地域の担当は俺ということか。いや、この地域だけじゃないな、これから他の地域を周るから結局は辺境星域は俺の担当ってことか……、どうやらオーディンの連中の狙いはこれか、俺はまんまと嵌められたらしい……。
官僚達の顔が強張るのが見えた。そしてクラインゲルト子爵がますます皮肉な笑みを大きくする。全くこいつら何考えてやがる、お前らがそんなだから俺に仕事が来るんだ、この馬鹿が! 後できっちり説教してやる!
帝国暦 489年 1月 10日 オーディン 帝国広域捜査局 アンスバッハ
「アンスバッハ課長、キスリング少将がお見えです」
「今何処に?」
「応接室です」
「有難う」
にこやかに話す女性職員に礼を言って、私は応接室に向かった。帝国広域捜査局第六課課長、それが今の私の肩書きだ。フェルナーは第六課の課長補佐、本来は管理職のはずなのだがどうにも身体を動かしたがり現場に行きたがる。今日も外に出かけている。或いはキスリング少将と顔を合わせるのを避けたのかもしれん。私の前で彼と親しくするのは良くないとでも考えたか……。
応接室に入るとソファーに座っていたキスリング少将が立ち上がり敬礼をしてきた。いかん、此処にいると敬礼をするのを忘れる、慌てて敬礼した。
「お呼びたてして申し訳ない」
「いや、構いませんよ、アンスバッハ准将。それで今日は一体何を」
「実はヴァレンシュタイン司令長官からある指示がありました。その件で少将の御協力を得たいのです」
「指示ですか……」
キスリング少将は訝しげな表情をした。理由は分かっている。
「アンスバッハ准将、広域捜査局は司法省の管轄下のはず
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