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堕ちた政治家
第七章
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「政治家、人間として」
「全くです」
「何ていうかね」
「あそこまで公私混同が酷く」
「国民の税金で贅沢をしてね」
「女性問題もありますし」
「外国からの話もあるしね」
 顧問も難しい顔で言う。
「堕ちたものだね」
「そうですね、政治家として」
「人間としてかな」
「政治家として以前に」
「少なくとも自分の言ったことはね」 
 顧問はテレビのニュースを観ながら幹部に話した。
「その通りにしないとね」
「人は納得しませんね」
「旧帝大を抜群の成績で出て海外留学もして教授になって」
「そして政治家に華麗な転身をしましても」
「それでもね」
「あれではお話になりません、私も見間違えました」
 幹部はここで反省もした。
「あの様な人物を議員に擁立すべきではありませんでした」
「君が声をかけたからね」
「料亭の時で思ったのですが」
 鱒弐が勘定を払う場に姿を現さなかった時にだ。
「そこで止めておくべきでした」
「それは仕方ない、人も政党も気付くには時間がかかる」
「そういうものだからですか」
「今実際にそうじゃないか」
 ニュースの中身が変わった、鱒弐からだ。 
 今の与党の話になった、スキャンダルに次ぐスキャンダルに失政に次ぐ失政、そしてどんどん出て来る失言だ。
 そういったものが報道されているのを見てだ、顧問は幹部に言った。
「国民もわかってきた筈だよ」
「今の与党がどういった存在か」
「こちらも酷いよ」
「無能なだけでなく腐敗しきっていますね」
「はっきり言えばそれぞれ自分のことしか考えていない」
 まさにというのだ。
「そうした政党だから」
「自滅しますね」
「近いうちにね、既に総理が二人代わっている」
 あまりにも政策も行動も発言も酷いからだ。
「もう次はない、では」
「我々は、ですね」
「現実を見て慎んで政策を出していこう」
「それが一番だから」
 アンパンと牛乳を腹の中に入れてだった、そのうえで仕事にかかった。現実を見据えて身を慎んでいこうと思いつつ。
 鱒弐は政治生命を完全に絶たれテレビにも出られなくなった。彼は完全に消えて最早あの人は今、という状況になった。党の総裁、そして総理に返り咲いた彼も幹事長に復権した幹部ももう思い出すことはなかった。ただ彼等の仕事をするだけだった。
 総理はある国に行く時にだ、幹事長に言った。
「ホテルはいつもの様にね」
「二万数千のですね」
「それでいいよ」
 スイートルームではなくというのだ、そこに泊まって仕事をするというのだった。ごく自然に。そして鱒弐を思い出したのは彼が公金横領や収賄が明らかになった時にだった。テレビのニュースを観て捕まったのかと思ってそれで終わりだった。


堕ちた政治家   完



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