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堕ちた政治家
第三章
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 そしてだ、彼等はこうも思ったのだった。
「ちょっと注意してみるか」
「言っていることとやっていることが違うのならな」
「そうした人間は信用出来ないかも知れない」
「金はあるのに慰謝料をケチるのなら」
「ちょっとな」
「注意した方がいいか」
 鱒弐を知る者は次第にこう考えだした、だが鱒弐の知名度は上がり続け学者としてのキャリアも重ねていった、そして僅か三十代で教授となった。
 教授、それも旧帝大の法学部のだ。その権威も加わってだった。
 鱒弐の本は売れ続けテレビへの出演も出演料もさらに上がった、彼はまさに得意の絶頂にあった。そして。
 その中でまた離婚もして再々婚もして愛人との間の子供も出来て認知もした。気付けば子供の数は十人近くになっていたが。
「認知していない子供がいる?」
「そうかも知れないな」
「別れた二人の元奥さんと愛人の間に結構子供がいるが」
「養育費もけちってるのか」
「どんどん儲けてるっていうのに」
「それでもか」
「女性問題が気になるな」
 こうした声も出ていた。
「どうもな」
「しかも金はとことんケチる」
「あるのにな」
「大学でも人の為に金を使うことはないらしい」
「自分の金は使わない」
「随分吝嗇らしいな」
「人に何かをやることはなくてな」
 その吝嗇な面も問題視されていた、それでだった。
 次第に彼を知る者は彼の女性関係と金銭面の問題を見だした。だがそれはテレビ等で出ることはなくてだった。
 有名になる一方でだ、その知名度を見てだった。
 政権与党からだ、彼に声がかかった。
「私が、ですか」
「はい、どうでしょうか」
 与党の幹部からだ、彼と直接会いたいと申し出があり料亭で会ってだった。そのうえでその料亭の中で話をしていた。
「選挙に出られてです」
「政治家にですか」
「どうでしょうか」
 こう彼に誘いをかけるのだった。
「先生の知名度とこれまでの発言ならです」
「選挙に出てもですね」
「勝てます」
 国会議員になれるというのだ。
「政策もありますね」
「勿論です」 
 鱒弐は与党の幹部に胸を張って答えた。
「それは私の本や発言を御覧になって下さい」
「そうですね、では」
「その申し出お受けします」
 鱒弐は幹部に笑みを浮かべて言った。
「是非共」
「それでは」
「はい、それでなのですが」
 ここでだ、鱒弐は。
 料亭の懐石料理を口にしてだ、こうしたことを言ったのだった。
「このお店のお料理はいいですね」
「はい、いい職人が作っていまして」
「だからですね」
「美味しいですね」
「絶品です」
 まさにというのだった。
「これだけ美味しいとは」
「こうした場所でお話することはあまりないですが」
 今は、というのだ。
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