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赤ちゃんが欲しい
第三章
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「しかし一人では満足しないことだ」
「二人も三人もですか」
「より多くだ、わかったな」
「一人だけでもまだ」
「出来ていないのに、だな」
「まだそこまで考えられないです」
「そこはアッラーの思し召しだな」
 子供はアッラーが授けてくれる、その生誕から死後どうなるかまで全てアッラーが定めているというイスラム独特の強烈なキリスト教カルヴァン派で言う予定説から来る考えだ。
「まさに」
「子供を授かることも」
「そうだ、しかしだ」
「私も頑張ることですね」
「細君との間に子供を作れ」
 絶対にというのだ。
「いいな」
「わかりました」
「さて、ではアーイシャを祝ってやってだ」
 ムワッヒドはハムディに話してから彼女と彼女の中に宿った我が子について考えた。
「今日はどの娘と床を共にするかもな」
「お考えになられますか」
「そうしよう」
 今夜もというのだ、そして実際に彼はこの日も愛人の一人と共に寝た。そして数ヶ月程してまた子を授かったと聞いた。
 大台の百人目に到達した、彼はそうなったが。
 ハムディはまだだった、それでムワッヒドは自分の百人目の子が宿りアーイシャが妊娠八ヶ月となったと聞いてから彼に問うた。
「まだか」
「残念ですが」
「普通はそうか」
「旦那様の様には」
「いかないのが普通か」
「はい」
 どうしてもというのだ。
「正直羨ましいものがあります」
「子供は宝だからな」
「何といっても」
「だからだな」
「はい、非常にです」
 それこそとだ、ハムディはムワッヒドに答えた。自分の席に座している彼の横に生真面目な姿勢で立ったうえで。
「私もです」
「子供が欲しいな」
「それが本音ですが」
「しかしだな」
「子供が出来るかどうかは」
 それはというのだ。
「中々」
「望んでも得られないか」
「私の場合はその様です」
「そうか、ではだ」
「それでは」
「わしにいい考えがある」
 笑ってだ、ムワッヒドは言った。
「それをやってみるか」
「いい考えとは」
「アラビアンナイトだ」
 ムワッヒドは笑ってだ、ハムディに言った。
「それをしろ」
「まさかと思いますが」
「細君に一夜に一話だ」
「一話ずつですか」
「読んでもらえ」
「そして千一夜終わった後は」
「わかるな」
 ハムディに顔を向けて笑って言った。
「そこから先は」
「そのお話は本当ですか?」
「少なくともシャハラザードは出来ていた」
 千一夜の話が終わった後にだ、彼女は王との間に三人の子をもうけていた。それがアラビアンナイトの結末だ。
「だからだ」
「私もですか」
「細君に読んでもらえばどうか」
「そうすればですか」
「三人かどうかはわからないが」
「一人はですか」

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