第六章
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「それでいいってね」
「思っているからなんだ」
「それでなのよ」
「そうそう、お義父さんはね」
淳もこう言うのだった。
「欲がないのね」
「あれ、あなたもなの」
「うん、お義父さん欲ないよね」
これが夫の言葉だった。
「とてもね」
「飲む打つ買うでも?」
「僕もそこは困ったところだと思うよ」
淳もこのことは否定しなかった。
「とてもね、けれどね」
「欲がないからなの」
「いいんだ、お義父さんはギャンブルでね」
「生きようとしていないわ」
「遊びに徹してるからね、お酒も女の人もね」
その両方もというのだ。
「遊びだからね」
「あなたもいいっていうの」
「僕はお酒は飲むけれど」
それでもというのだ。
「他の二つはしないけれどね」
「どっちも駄目よ」
綾子もそこは釘を刺す。
「お父さんみたいな人でないと破滅するから」
「ほら、今言ったじゃない」
「今?」
「だからお義父さんみたいでないとって」
「ああ、確かに言ったわね」
綾子も言って気付いた、今から。
「自分でもわかってたってことね」
「そうだね、
「ううん、まあね」
バツの悪い顔になってだ、綾子は言った。
「結局遊びは遊びって割り切ってその中で力を抜いて欲もなくね」
「やっていけばいいんだね」
「のめり込まず溺れずに」
「それがお義父さんの言ういい加減なんだろうね」
「いい『加減』ね」
綾子はここではっきりと父が言っていることがわかった。
「そういうことなのね」
「僕もそうだと思うよ」
「そして冗談というのも」
「そうした意味での言葉だったんだよ」
「お世辞にも褒められた人じゃないけれど」
飲む打つ買うの三拍子は絶対にとだ、父と違い生真面目な彼女はそこは譲らなかった。だがそれでもだった。
そしてだ、こう夫に言ったのだった。
「お母さんがずっと一緒にいる理由がわかったわ」
「そうだね」
「それもよくね」
笑顔で言う綾子だった、そして。
夫にだ、今度はこう言ったのだった。
「これからは前よりもお父さんを穏やかに見れそうよ」
「わかったからだね」
「ええ、それでよ」
笑顔での言葉だった、優しい。そのうえで自分達の子供達が父から自分達のところに来た時に彼等に話した。
「お祖父ちゃんの真似はしたら駄目だけれどお話はよく聞くのよ」
「遊ぶことはだね」
「真似したら駄目なのね」
「そう、ああした遊びはよくないけれど」
向山も孫達には一切遊びは教えていない、欲があるとやってはいけないことだというからだ。
「お話はよく聞いてね」
「うん、そうするね」
「お祖父ちゃんのお話は聞くね」
「そうしたらいいから」
色々な勉強になるからだとだ、綾子は子供達に言った。そして父
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