第二章
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「有り難いな」
「外に子供を作らないとね」
「そんなことは一度もしていないぞ」
やはり笑って言う向山だった。
「誓って言うが」
「私の腹違いの兄弟姉妹はいないって言うのね」
「そうだ、二十で結婚してこのかたな」
五十年以上の間というのだ。
「そんなことは一度もだ」
「ないのね」
「浮気はいつもだがな」
「全く、それが駄目なのよ」
「酒に博打もだ」
「どう考えても完全に駄目人間じゃない」
綾子は自分の父親に容赦なく言った。
「七十過ぎて」
「仕事はちゃんとしてたぞ」
定年までだ、仕事は鳶職だった。太っていたが軽快な身のこなしで危険な仕事を軽々とこなしていたのだ。
「ずっとな」
「それはいいけれどよ」
「高校を卒業してからな」
それこそというのだ。
「ずっと遊んでたがな」
「卒業まで?」
「正確に言うといた頃からだ」
高校にというのだ。
「酒も博打もやっていたぞ」
「女遊びもよね」
「ははは、その時から色々あったな」
「全く、どうしようもないんだから」
「御前から見ればそうなんだな」
「お兄ちゃんもうちの旦那も弟の健吾もそんなことないでしょ」
自分の周りの三人はとだ、綾子は言った。
「そうでしょ」
「息子達は皆真面目だな」
「お父さんを反面教師にしたのよ」
「それでか」
「飲む打つ買うの日々を見てね」
「わしの様になるまいか」
「そうよ、いいことはお母さんや私達に暴力を振るったり借金を作ったり偉そうにしないこと」
この三つだというのだ。
「それだけじゃない」
「後は完全に駄目か」
「その歳でキャバクラとか」
綾子はまたこの話に戻った。
「全く、呆れたわ」
「ずっとやってるぞ」
「そのずっとが問題よ、七十過ぎて何やってるの」
「死ぬまでやるぞ」
「死ぬまで遊んで暮らすつもり?」
「そうだ、いい加減に生きていくぞ」
笑ってだ、向山は娘に豪語した。
「しかし今日はその店には行きにくくなったな」
「じゃあ大人しくしたら?」
「ソープに行くか」
そこにというのだ。
「そうしようか」
「ふざけてないわね」
「本気だぞ」
「尚悪いわ、幹也や未華子には見習えって言えないわね」
綾子と夫の間の子供だ、一歳違いの兄妹で夫婦で愛情を注いで育てている。
「最初から言ってないけれど」
「最初からか」
「幹也が産まれてからね」
最初の子をというのだ。
「そうしてるわ」
「あの子達はわしに懐いてるぞ」
家に来た時はというのだ。
「孫達は全員だがな」
「それが不思議なのよね」
ここで首を傾げさせた綾子だった。
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