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作られた善行
第一章
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                       作られた善行
 近頃テレビで田亀和博とかいうボクサーがやたらテレビに出ていた、笘篠正樹はその彼を最初見てこう言った。
「人相の悪い奴だな」
「御前もそう思うか?」
 彼と共にテレビ、自宅でそれを観ている兄の優樹も言ってきた。二人共背は一七五程であり二重の睫毛の長い目と大きな口を持っている。優樹は黒髪だが正樹は金髪にしている。兄弟で別々の大学に通っていてサークルとアルバイトにそれぞれ精を出しているが今日はたまたま一緒にテレビを観ているのだ。
 その時にだ、優樹は弟に言った。
「俺もそう思った」
「こいつ確かボクサーだよな」
「ああ、そうだ」
 優樹はサイダーを飲みつつ弟に答えた。
「プロのな」
「そうだよな」
「ついでに言えばな」
 優樹はさらに言った。
「こいつ三兄弟の一番上だよ」
「三人共ボクサーか」
「同じジムのな」
「そうなんだな」
「で、世界チャンピオンになってるけれどなこいつ」
 その三兄弟の一番上を観つつ言う。
「人相悪いな」
「チャンピオンっていうかな」
 その釣り上がった目に猿、それも喧嘩ばかりしている様な顔で髪は丸坊主だ。ファッションもそんなものだ。
「チンピラだな」
「喋り方もな」
「品のない奴だな」
「何かボクサーになるまでは中学でいきがってたらしいな」
「ああ、それで喧嘩ばかりしてか」
「ボクサーになったらしいな」
「じゃああれだな」
 正樹は兄と話していて一つの結論に達した、その結論はというと。
「喧嘩とボクシングは一緒か」
「こいつ等の中ではそうだろうな」
「殴って金儲けしてるか」
「そんなところだな」
「じゃあ碌な奴じゃないな」
「そんなの喋ってるの聞いたらわかるだろ」
「ああ」
 その通りだとだ、正樹も答えた。
「本当にな」
「つまりな」
「そんな奴か」
「ところがテレビだとな」
「何かボクサーになって生まれ変わったとか宣伝してるな」
「けれどわかるだろ」
「マスコミだからな」
 テレビもまた然りだ、その媒体だからというのだ。
「こうしたチンピラあがりでもチャンプになれた」
「立ち直りとかそんなのか」
「そう放送してるんだよ」
 まさにというのだ。
「今みたいにな」
「こいつ更生してないだろ」
 正樹は確信を以て言った、その田亀の長男のテレビでの喋りを聞いて。
「絶対に」
「そうだろうな」
「こいつがそんな奴か」
 それこそというのだ。
「絶対に違うだろ」
「今もチンピラだな」
「俺にはそうとしか見えないよ」
 ポテトチップスを食べつつ言う。
「猿山の猿だ、こいつ」
「兄弟全員こんなのでな」
 優樹はさらに話した。
「親父もなんだよ」
「一家全員ろくで
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