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最高のご馳走
第二章

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「我々はね」
「そして大阪でも食べられるね」
「大阪の美味しいものを」
「大阪にも美味しいものは多い」
「では次は大阪に行くとするか」
「そうしよう、だが今は」
 すっぽんのゼラチン質を口の中に入れる、その独特のなめらかな食感も楽しみつつそのうえで友人というか同志達に話した。
「すっぽんを食べ」
「そしてだね」
「さらに食べる」
「そうするんだね」
「南禅寺に行こう」
 何故そこに行くかというと。
「湯豆腐を食べに」
「そうそう、京都に来たのならね」
「あそこにも行かないとね」
「何と言っても湯豆腐は京都だ」
「京都に来たら湯豆腐を食べないと駄目だ」
「絶対に」
「そしてさらに」
 菊池はすっぽんの次をさらに言う友人達に答えた。
「鱧もあるしね」
「おっと、忘れてはいけないね」
「京都は鱧もあるんだ」
「お金を出せば美味しいものを食べられる」
「そうした場所だからね」
「幸い僕達は金がある」
 だからこそというのだ。
「それならだよ」
「食べない手はない」
「着物はどうでもいいとして」
 京都は着倒れの街と言われている、服とりわけ着物を選ぶ街なのだ。西陣織という絹織物があるのも伊達ではない。
「料亭巡りだ」
「折角京都に来たのだから」
「京都で食べ尽くすぞ」
「京都の酒も飲もう」
「東京では味わえないものを味わうんだ」
 他の会員達も言ってだった、彼等はすっぽんも豆腐も鱧も食べた、そのうえで満足して東京に帰ったのだった。 
 菊池も他の会員達も美食を極めていた、世界中を巡って美味いというものは何でも食べていった。だがだった。
 ふとだ、彼は今は経営している会社の中でお抱えのシェフに作らせたフランス料理を食べつつだ。こんんなことを言った。
「何か」
「何かとは」
「物足りない気がするね」
 こう秘書の田中和紀に言うのだった、巨漢の菊池と違い一六五程の小柄な男だが秘書としては有能である。
「どうにも」
「まさかと思いますが」
「美味しいものを食べているね」
「はい、今も」
「確かに美味しい」
 今食べているそのフランス料理もというのだ。
「シェフの太田君の腕は今日も素晴らしい」
「流石というのですね」
「食材も選りすぐりだ、だが」
「最高に美味しくてもですか」
「何かが足りないね」
「左様ですか」
「これが倶楽部で会員の皆と食べていたりね」
 それにというのだ。
「家族と食べているとね」
「美味しいですか」
「最高の気分になるね」
「そうなのですね」
「けれど不思議だね、一人で食べると」
 これがというのだ。
「あまりだね」
「美味しくてもですか」
「物足りないね」
 こう言うのだった。
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