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逆柱
第二章

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「出来ればです?」
「出来ればといいますと」
 池田が彼に応えた、昔の大工の様に長方形の顔で細く鋭い目と太い眉を持っている。白くなっている髪は短く刈っていて中肉中背の身体は筋肉質だ。
 その彼がだ、哲章の言葉に応えた。
「何かありますか」
「家を建て替える時時間があれば」
 その時はとだ、彼は言うのだった。
「建てていく状況を観ていいですか」
「ご自身の家の」
「はい、そうしていいですか」
「ええ、どうぞ」 
 一も二もなくだ、池田は彼の申し出を受けた。
「やっぱりご自身の家が達っていく状況を観たいですね」
「はい、ですから」
「ではどうぞ」
「あの、私も」
 真弓も池田に申し出た。
「私は専業主婦で時間があるので」
「奥さんはいつもですか」
「そうしていいですか」
「はい、どうぞ」
 池田は真弓にも気軽に答えた、外見は厳しいが口調は気さくな感じだ。
「望まれるだけ御覧になって下さい」
「では」
 こうしてだった、真弓が主に家が建てられていく状況を観ることになってだった。実際に彼女は毎日自分達の家が建てられていく状況を観た。
 それも楽しくだ、真弓はにこにことして毎日観ていた。
 そしてある日だ、家の柱が建てられていくが。
 池田はその時にだ、共に家を建てる部下達に注意した。
「逆さにはするなよ」
「はい、家の柱は」
「絶対に逆さにしない」
「そこは守ってですね」
「いつも言ってるな」
 池田の周りへの声は何時になく厳しかった。
「そこはしっかりと守れよ」
「わかってます、柱は逆さにしない」
「絶対にですね」
「そこは」
「そうだ、守れ」
「あの」
 彼等の言葉を聞いてだ、すぐにだった。
 この日も家が建てられていくのを観ていた真弓は怪訝な顔になって池田のところに来て彼に対して尋ねた。
「家の柱ですが」
「今の話ですね」
「どうして逆さにしたらいけないんですか?」
「昔から言われていまして」
 こう前置きしてだ、池田は真弓に話した。
「家を建てる時その柱は逆にしないんですよ」
「順にですか」
「はい、絶対に逆さにせずにです」
 そのうえでというのだ。
「建てるんです」
「それはどうしてですか?」
「はい、若し柱を逆さにして建てますと」
 それはというと。
「異変が起こると言われています」
「異変ですか」
「その家には碌なことがないと言われてまして」
「それで、ですか」
「家の柱には注意しています」
「逆さにしない」
「はい、絶対に」
 何があってもという返事だった。
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