第20夜 口伝
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実に自分からこの部屋には戻ってこないと思うし……」
「…………………」
ギルティーネは是も非も言わず、静かに先程座っていた椅子の方へと戻っていった。
その背中は見間違いか、いつもより小さく見えた。
(いや、全然落ち込んでない可能性も多分にあるけど………一応、後でなにか差し入れをあげよ)
念を押しておくが、彼女が実際に何を考えているのかは分からない。
彼女の感情をいくら推し量っても、それはトレックの勝手なイメージである。
= =
聞き込みによる情報収集は、予想よりはスムーズに事が進んだ。
まず、外灯の上の上位種呪獣は試験開始前から存在した可能性が高いことがすぐに判明した。
あの外灯のエリアでは、ここ最近複数名の呪法師が行方をくらましているらしい。当然砦の人間も馬鹿ではないので外灯の上に呪獣がいる事には思い至っていたが、ここで何故かローレンツ大法師から待ったがかかり、討伐は為されていないという。
情報収集がスムーズに行った要因に、ローレンツ大法師への不信を感じた。
当然だろう。犠牲者が増えることが分かり切っていながら、大法師はその討伐に待ったをかけたのだ。結果として犠牲は増え、討伐中止の理由を語らない大法師の態度に対する不満はかなり高まっている。
それでも表立って波が立たないのは立場の差故。
告げ口が饒舌であったのは法師としての矜持故。
大法師の判断は理解に苦しむものだ。彼の命令一つがあればドレッドは死なずに済んだし、更なる犠牲も生まれなかっただろう。そこにどんな理由が存在したにせよ、トレック・レトリックという男の中でこの遺恨は大きなものだ。
一報、試験に参加した学徒からの話から得られた情報は少なかった。
そもそも学徒の中であの呪獣に襲われた人間の数が少なく、犠牲者はドレッド達を含めて十数名程度しか出ていなかった。しかもそのうち3組は全滅しているため生存者がおらず、生き残りも「突然いなくなった」という代り映えのない情報ばかりだった。
ただ、一つ気になったことがある。
襲撃を受けたメンバーで犠牲になった人間に共通項はなく、逆に生存者では必ずペトロ・カンテラを所持した人間が生き延びている。全滅もあるしケースが少ないために偶然とも受け取れるが、数少ない情報だ。
(やはり上位種の呪獣とて光は怖いということか?)
しかし、犠牲になった呪法師もペトロ・カンテラの光の届く中には居た筈だ。つまり短時間ならカンテラの光に入っても問題はないと考えるべきだろう。となると――単純に真上から攻撃する際にカンテラが邪魔になるだけだろうか?
それはそれで少し引っ掛かりを覚える。短時間光の中に入ることができ、なおかつ人間一人を容易く持ち上げる力がある
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