第20夜 口伝
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形にならない。
常にあの場にいるのか、それとも少しは移動しているのか。
攻撃対象の優先順位は存在するのか。
ペトロ・カンテラへの耐性はどの程度あるのか。
攻撃方法は具体的に何で、被害者はどう死んだのか。
緻密な作戦を練るには余りにも情報が不足している。
人間の作った遮蔽物を利用する戦略性を持った呪獣がこちらからの攻めに対してどう対応するのかも未知数だ。そう考えて、ふと脳裏に引っかかりを覚える。
「ていうか、待てよ。あの呪獣はどう考えても待ち伏せタイプだし、他の学徒だって外灯の真下を通って戻ってきた筈だ。被害はどの程度出てるんだ?いや、そもそもあの呪獣はいつからあそこに出現している?」
ある日突然出現したのなら不幸としか言いようがないが、もしも前からあそこに出現するのならば当然砦の呪法師はそれを承知の筈だ。だとすれば、砦の呪法師はあの呪獣の情報を持っているのではないか?
もしそうだとしたら是非とも拝聴したい――その呪獣を今の今まで放置して犠牲者を出した挙句に学徒に情報を隠匿し、むざむざ犠牲者を増やした理由とやらも含めて、だが。
「……調べなきゃならない事が山ほど出来たかも、な」
呪法師は治安維持活動も行うためにこの手の調べものをする訓練も受けている。
時間がひっ迫している今、訓練の成果を発揮することに躊躇う理由もない。
被害者たるステディにも、協力してくれるかは不明だが一応詳しい話を聞く必要がある。
トレックはソファから立ち上がり、部屋の扉に目を向ける。
行動指針が決まった以上、行動あるのみだ。足を進めて扉の前に立ち、ドアノブを握る。
と、そういえばギルティーネにまだ何も指示をしていない事を思い出して振り返る。
「ギルティーネさ……ってうおぉぉぉッ!?」
「…………………」
振り返ったその空間に、既に席を立っていたギルティーネの整った顔が至近距離で待っていた。
音もなく立ち上がり、剣を装備してついて来ていたらしい。全く気配を感じられなかった。
その表情は相変わらず無表情だが、そこはなとなく「私は指示されなくても動ける女なので」みたいな自慢げな態度が漂っているような気がするような、しないような。
しかし、もしもそう考えているのだとしたら誠に申し訳ないことを伝えなければならない。
「……ギルティーネさんは『鉄の都』では札付きだよね。聞き込みの邪魔になる可能性があるから、その………」
「…………………」
動かない。ギルティーネが無表情のまま動かない。
指示が不明瞭なのか、ショックを受けているのかは不明だが、動かない。
「……この部屋で大人しくしててくれる?この部屋は一応ステディさんと相室ってことになってるけど、彼女はほぼ確
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