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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十四話 捕虜交換後(その2)
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する嫌悪感はかなり強いのではないかと思います。無理に導入して帝国を分裂させる危険は冒せなかったのではないでしょうか」
私の言葉にトリューニヒト議長は頷き、後を続けた。
『とすれば、このままゴールデンバウム王朝による独裁制を維持し、皇帝主権による民主主義を目指すべきだと彼は考えたのだろう。そのほうが混乱も弊害も少ない……。そうではないかな?』
「なるほど、まるでペルシア人のようですね」
『私が何故ペルシア人の故事を思い出したか、分かったかね』
「ええ」
トリューニヒト議長は笑みを浮かべていた、しかしその笑みを収めると溜息を吐いた。
『手強い相手だな。厄介な相手でもある。しかし民主主義は何としても守らなければ……』
民主主義か……、スクリーンに映るトリューニヒト議長は同盟を守るとは言わなかった。偶然か、それとも……。
「トリューニヒト議長、議長は同盟を守る事と民主主義を守る事を分けて考えてはいませんか?」
『……』
トリューニヒト議長は沈黙している。その顔を見ながら言葉を続けた。
「同盟が滅んでも民主主義を守れれば……」
『そこまでにしたまえ、ヤン提督!』
「しかし……」
『私も君も国家の重職にあるのだ。そんな私達が国家の滅亡を前提に話すなど、外に漏れればとんでもない事になる』
「……」
『いずれはそれを話すときが来るかもしれない。しかし、それは今ではないだろう。自重したまえ、ヤン提督……』
今は話すときではないか……。やはり議長はそれを考えている。帝国の脅威にならない形で民主主義を残す、それならヴァレンシュタイン元帥を説得できるかもしれない……。いずれは話すときが来るのかもしれない、そしてその時は遠い事ではないだろう。それが分かっただけでも良しとすべきだ。
重苦しい空気を振り払うかのようにトリューニヒト議長が話題を変えてきた。
『レベロがルドルフについて面白い事を言っていた』
「面白い事、ですか」
私の問いかけにトリューニヒト議長は笑みを浮かべて頷いた。
『ルドルフは最初から神聖不可侵の皇帝になろうとしたのではないだろうと、多少独善的では有っても改革の意思に溢れた人間だったのではないかとね』
「はあ」
何と言って良いのだろう、確かに有り得る話ではある。先程までの話に関連が有るのだろうか? 私の困惑に気付いたのだろう、心配するなと言わんばかりにトリューニヒト議長が笑い声を上げた。
『私は別な事を思った。ルドルフは本当は皇帝になど成りたくなかったのではないかとね』
「成りたくなかった? 皇帝にですか?」
私は余程間抜けな声を出したのかもしれない。トリューニヒト議長はまた笑い声を上げた。
『彼は自分が危険な方向に進んでいると思ったのではないかな。このままで行けば
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