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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十四話 捕虜交換後(その2)
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で選ばれた君主による独裁制のほうが弊害が少ない……。
ダレイオスの言葉を、当時のペルシア人達の選択を否定する事は難しい。ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの簒奪はまさに当時の政治家達の腐敗が一因であった。当時の連邦市民は間違いなくルドルフを支持し彼が皇帝になることを望んだのだ。
『ヤン提督、私はこう考えている。それぞれの統治体制には確かに欠点が有る。だが問題は統治体制ではなく、それを運用する人間に欠点が有る事ではないか、それこそが真の問題なのではないかと……。だからこそ人類は時においてそれぞれの統治体制を選び、否定した。人類の歴史はその繰り返しではないだろうか……』
「……」
民主制国家から独裁制国家が生まれ、独裁制国家から寡頭制国家、民主制国家が生まれた。国家が疲弊したからではない、国家を統治する人間が疲弊したからだということか。国家を正常な状態に戻すには統治体制を変え疲弊した統治者を一掃するしかなかった、そういうことだろうか……。だとすれば独裁制国家が生まれるのも寡頭制国家が生まれるのも必然という事だろうか……。
スクリーンに映るトリューニヒト議長の顔には先程までの笑みは無い。いや私を見てもいないだろう。少し俯き、憂鬱そうな表情をしている。
「議長、議長は民主制に対して疑問を持ってはいませんか?」
私の言葉にトリューニヒト議長は軽く苦笑した。
『正直疑問は持っている。あの馬鹿げた侵攻作戦で一千万の犠牲を出しても帝国に対して主戦論を唱える人間がこの国では多数を占めるのだ。軍に対する非難など一時的なものでしかなかった。あの犠牲はなんだったのか……、君はそうは思わないかね?』
「……」
『だが、それでも民主制は守らなければならないと思う。国民の意思を国政に反映させる、その一点で民主制を超える統治体制は無い。政治を一部の人間だけが扱う特別なものにしてはならないのだ。それを許せば統治者は傲慢になり、政治は市民に対して必要以上に犠牲を強いるようになるだろう』
一つ一つ確かめるように出された言葉だった。正直、目の前の男がそんな言葉を発する事に違和感があった。私の様子に気付いたのかもしれない。トリューニヒト議長は微かに苦笑すると“らしくないと思っているかね”と問いかけて来た。
「いえ、そんな事は……」
芸の無い答えだ。議長もそう思ったのだろう、苦笑の色が強くなった。それを見て私も苦笑を漏らした。少しの間沈黙が落ちた。
『ヤン提督、ヴァレンシュタイン元帥は今帝国に民主主義を布いても上手く機能しないと考えたのではないかな。同盟市民に比べれば帝国に住む人間は政治的な成熟度は遥かに低い。同盟でさえ上手く機能しているとは言い難い統治体制を帝国に受け入れるのは無理だと』
「それも有りますが、帝国内部では民主制に対
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