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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十四話 捕虜交換後(その2)
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た。話し合われた統治体制は三つ……、一つは万民に主権を与える民主制、もう一つは貴族による寡頭制、残る一つは君主による独裁制。

それぞれの利点と欠点を挙げたらしい。ある人物は独裁制を否定し民主制を讃えた。独裁制に関しては“何の責任も負う事なく思いのままに行なう事のできる独裁制は秩序ある国制とは言えない、独裁者ほど言行が常ならぬものはなく、父祖伝来の風習を破壊し、女を犯し、裁きを経ずして人命を奪う”と言っている。

そして民主制ならばそんな事は無い、万民が平等であるならば独裁者の行なうような事は起きない。あらゆる国策は公論によって決せられる、と言った。独裁制の危険と民主制の理想を述べたといえるだろう。

当然だが民主制に反対する人間がいた。“何の用にも立たぬ大衆ほど愚劣でしかも横着なものはない。独裁者の暴政を免れんとして、狂暴な民衆の暴政の手に陥るというがごときは、断じて忍び得ることではない”。

“もともと何が正当であるかを教えられもせず、自ら悟る能力もない者が、さながら奔流のように思慮もなく、ただがむしゃらに国事を押し進めてゆくばかりだ”

そして民主制に反対した人間は寡頭制を支持した。“最も優れた人材の一群を選抜し、これに主権を与えよう。最も優れた政策が最も優れた人間によって行なわれることは当然の理である”。

政治的な成熟度の低い国民に主権を与える事の危険性を述べた上で、一部のエリートによる統治を提唱した。彼の生まれた時代であれば独裁制に危惧すれば寡頭制を支持するのは当然かもしれない。しかし、現代に当てはまるかどうか……。

そして最後に後にペルシア王になるダレイオスが独裁制を支持した。“最も優れた唯一人の人物ならば、その卓抜な識見を発揮して民衆を見事に治める。しかし寡頭制では公益のために功績を挙げんと努める人間達の間に、激しい敵対関係が生じ易い”。

“各人は自分が第一人者となり自分の意見を通そうとする結果、互いに激しくいがみ合うこととなり、そこから内紛が生じる。内紛は流血を呼び、やがて独裁制に決着する“。

“民主制の場合には悪のはびこることが避け難い。公共のことに悪がはびこる際に悪人達の間に生ずるのは敵対関係ではなく、むしろ強固な友愛感である。なぜなら国家に悪事を働く者たちは結託してこれを行なうからだ”。

“このような事態が起り、結局は何者かが国民の先頭に立って悪人どもの死命を制することになる。その結果はこの男が国民の讃美の的となり、讃美された挙句は独裁者と仰がれることになる”。

結果としてペルシア人達は独裁制を選択した。寡頭制は国を分裂させる危険を、民主制は大衆の人気に乗じた僭主の台頭を招きかねない。そして進むところは独裁制だ。何故ならば独裁制こそが最高の統治体制だから。であるならばしかるべき手順
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