730部分:第百十話 薔薇の毒その一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第百十話 薔薇の毒その一
薔薇の毒
アフロディーテが玄室に辿り着くとだった。もう彼が待っていた。彼はアフロディーテの前に立ちだ。そのうえでこう言ってきたのである。
「待っていた」
「私が来るのがわかっていたというのですね」
「そうだ。貴様以外にはいない」
その男ミシェイルはアフロディーテにこうも告げた。
「貴様以外にはな」
「貴方の相手をするのはというのですね」
「その通りだ。それは貴様だけだ」
また言う彼だった。
「私の相手ができるのはな」
「有り難い御言葉と申し上げておきましょう」
アフロディーテはミシェイルのその言葉を聞いて静香に述べた。
「まずそれは」
「そう言うのか」
「はい、そしてです」
アフロディーテの言葉はさらに続く。
「私もまた」
「貴様もだというのか」
「私の相手ができるのは貴方だけです」
彼もまた言うのだった。
「アスタロト、貴方だけです」
「そう言うか」
「その通りです。では」
早速その右手に薔薇を出してきた。赤薔薇である。
「早速はじめるとしよう」
「薔薇か」
ミシェイルはその薔薇を見て述べた。
「やはり貴様はそれか」
「私にとって薔薇は身体の一部」
アフロディーテはそれについても言う。まさにそれだというのだ。
「しかし。私はただそれだけで戦っているのではありません」
「薔薇だけでなくか」
「それだけとは思わないことです」
ミシェイルを見据えての言葉だ。その闘気はその整った顔からは想像できないまでに強いものだった。それを見せながらの言葉であった。
「それだけとはです」
「薔薇以外に技があるというのか」
「私もまた黄金聖闘士」
それだというのだ。
「それならばそれも当然のこと」
「薔薇だけには頼っていないか」
「普段はそうであろうとも」
また言うのだった。
「いざとなればです」
「かつて私と戦った時」
ミシェイルはまたアフロディーテに対して告げた。
「そう、その時だが」
「中国との戦いの時ではありませんね」
「あの戦いより前だ」
かつての中国での一連の戦いのことだ。その戦いにおいてアフロディーテは多くのものを見てきた。しかしその時ではないというのである。
「それよりもだ」
「そうですか。それよりもですか」
「わかるな、これで」
「はい」
ミシェイルの問いに静かに返した。
「よくわかります」
「かつての聖戦の時」
話が具体的なものになった。
「その時貴様は私にその外見からは想像できないまでの闘志を見せた」
「美は絶対のもの」
アフロディーテはミシェイルに対して己の信念で返した。まさしくそれは彼にとって絶対の信念である。彼は美こそが正義と考
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ