ー 平和な日常 ー
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
抱きかかえたままソファの方へと移動し、自らの膝上へと座らせてしまう。 よほどユーリの犬耳が気に入っていたのか、しばらくふくれっ面を浮かべていたが仔犬にそうするように撫でられ撫でられ、にヘラと表情を緩ませた。 この光景に目を瞬かせたのは、ユイを自らの子供のように可愛がっていたアスナだ。
「……シィちゃんって実は子供好き?」
「んー? こんなの慣れだよ、慣れ」
ユイと戯れつつ、アスナに何でもないことのようにシィは言ってのけるが実際はそんなに甘くない。 対応を誤れば、ユーリのようにオモチャにされるか、最悪泣かせてしまおうものなら、罪悪感と周囲からの冷たい視線でメンタルに致死のダメージを受けかねない。
平然とやってのけるシィにキリトとアスナが羨望と驚きのこもった視線を向けているとユイから解放されたユーリはカップにお代わりの紅茶を注ぎつつ、ユイの暴走で中断されていたが、半ば強引に話を本筋へと戻す。
「……で、その子はどうするんだ?」
「……。 一応、訊ね人に上がってないかは調べてみたけど手がかりはなかった」
「それで、私たちどうしたらいいのかわからなくて」
暫しの沈黙の後、キリトが重々しく口を開き、声を暗くさせたアスナがそれに続く。 静まりかけた空気をハイ!、と澄んだ声が切り裂く。 音源の方へと視線を向ければ、片腕で器用にユイを抱きしめながら挙手をするシィ姿があった。
「『始まりの街』で子供たちの保護してる人がいるから行ってみたらー?」
シィの発言にへー、と三人が声を揃える。 この殺伐とした仮想世界にそんな親切なプレイヤーが居ることに驚くが、アインクラッドの攻略が4分の3進んだ今、ほとんど寄ることがない第一層のことについて知っているシィにも驚きだ。
なぜ、そんなことを知っているのか? と懐疑の視線を向けられ、シィは気まずそうに目線を逸らす。
「その……ブッパンのイベントが『始まりの街』でやってて。 ほら、あそこ広いじゃん」
「いや、そのまえにブッパンって何さ」
と、ユーリが突っ込む。 最近まで迷宮区攻略に明け暮れていたアスナは別として、それなりに自由な時間を過ごしていたユーリやキリトも聞き馴染みのない単語に首を捻る。
「物品販売の略ね。 製作系のスキル取ってる人が自分の作った作品を見せ合ったり、売ったりするんだよ」
「フリーマーケットみたいなものか」
「そう、それそれ」
「へー、もっと早く知ってれば行きたかったなぁ」
攻略の鬼と呼ばれるアスナも年頃の女の子らしく、楽しそうなイベントに表情を明るくさせる。
攻略組であり、お針子でもあるシィ。 自分の店を持たない割に、やけに顧客や知り合いが多いのはこういったイベントで作ってきたのであろう、と合点が言ったと頷くユーリの横で、何かを思い
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ