暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン63 蹂躙王と荒廃のHERO
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くる。
 そしてそれと同時に目の前で消えていったケルトに対するやりきれない思いや悲しみが次第に退いていき、その代わりに僕の心を戦闘への高揚感が満たしていく。後ろ向きな感情は、戦うためにはふさわしくないからだ。効率よく敵を圧倒するためには、僕の感情すら塗り潰され書き換えられていく。

「くっ……!」

 みるみる高まる衝動を感じながら、ケルトの最後の願いを思い出す。あの時ケルトは消える直前、僕に生き残れと言った。それはつまり、あの瞬間にケルトは正気に戻れたということだ。まるで、斎王を倒したらその体に取りついていた破滅の光が消えていったあの時のように。つまり、今回のあの隕石による赤い光が破滅の光と関係している……?いや、そう考えるにはいくらなんでもまだ少し早いだろう。だがあの時のように、洗脳された相手を倒せば正気に戻せるのはまず間違いないと見ていいはずだ。
 ……この思考も、本当は誰のものなのかわかったものじゃない。この僕『遊野清明』が考え付いた希望の光なのか、それとも何でもいいからただデュエルすることだけを求める破壊魔の『僕』が、僕から躊躇いを消すためにでっち上げた出まかせの方便なのか。
 だけどどちらにせよ、僕はこの誘いに乗ることを決めた。斎王をはじめとする光の結社のことを思えば実際分の悪い賭けでもないし、そもそもここでこのデュエルを受けなければこの闘技場から出ることは不可能だろう。自力で逃げ出すことも精霊の力を借りることもできないのなら、目の前の覇王を元の遊城十代に戻して扉を開かせるほかにできる事はなさそうだ。

「勝負だ、十代!こんなところで会うとは思わなかったけどね、それじゃあデュエルと洒落込もう!」
「十代?我が名は覇王。それがこの世界を統べる者の名、そして今から貴様を永劫の闇に突き落とす者の名だ」
「……あ、そう。ふざけたことばっか言ってないで、アカデミアに帰るよ!」

「「デュエル!」」

 先攻はまたも僕。このデッキに先攻はとことん向いていないが、こうなった以上やるしかない。
 ただ心配なのは、僕のデュエルディスクだ。先ほどのケルト戦が始まった時からすでに怪しかったが、あのデュエルでの衝撃のせいでますます不調がひどくなってしまったらしい。ディスクの中心に位置する青い球体は不規則に点滅を繰り返し、耳を澄ませば先ほどよりひどくなった異音が断続的に聞こえてくる。
 そういえば、先ほどのデュエルではちょいちょいヤジを飛ばしてきた観客も今は大人しい。それだけ、覇王に期待しているのだろう。愚かにも覇王軍に敵対した僕と言う贄を、自らのトップである覇王が完膚無きまでに蹂躙する様を一瞬たりとも見過ごすまいとしているのだろう。

「アウェー上等、やれることをやるだけ、か。カードを2枚セットしてターンエンド」
「ドロー。永続魔
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