第45話『絶望への誘い』
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ユヅキが王都の外か避難所かどうかは、この際知らない。
こんな地獄に独りで閉じ込められている可能性、それがあるだけで『自分だけ逃げる』なんて選択肢は消えていく。絶対に、置いてはいけないから。
痛みを堪え、右脚だけで身体を支えるのは至難の業。
だが、やらなければならない。そしてこのまま、進まなければいけないのだ。
「おいっ…どこだよ、ユヅキ?!」
そして晴登は、絶望へと一歩を踏み出した。
「残念だよ」
その背後から、氷柱が飛来してきたことにも気づかずに。
*
「何を…言ってるんですか?」
数秒前にされた質問の内容を反芻しながら、ユヅキは言った。反芻といっても、一切の理解はできていない。
「おっと、直球過ぎたかな。でも、そのままの意味だよ」
仮に質問を受けるなら、答えは否。
しかしそれ以前に、彼の発言の意図をユヅキは一切掴めないままだった。
そんな無反応なユヅキがつまらないのか、青年は困ったように頭を掻く。
「無言、か…。僕だって、こんなことを冗談で訊いている訳じゃないんだよ?」
「じゃあ、どうして…?」
ユヅキが問うと、彼は肩をすくめて語り始めた。
「──僕はここに来る間に、たくさんのウォルエナを見た。まさか王都に大量のウォルエナが出現するなんて、悪夢にも思わなかったね。さて、そこでだが・・・」
青年はそこで言葉を切る。どうやら、ユヅキの反応を窺っているようだった。
もちろん、ユヅキは無理解ゆえに無表情だが。
「…僕は察したんだ。このウォルエナの群れは、人為によるものだとね」
「え!?」
ようやく見せたユヅキの驚きに、青年は初めて薄く笑みを浮かべる。そして、すぐに話を続けた。
「自然にウォルエナが王都に出没するなんてありえない。確かに餌である人間が集まってはいるが・・・所詮は小心の獣だ。好んで入ろうとは思わないはず。だったら話は簡単さ。誰かが裏で奴らを操作してるとすると、この惨状は辻褄があうだろう?」
「・・・で、その操作している黒幕がボクだと…?」
「察しがよくて助かるよ。まだ推測の段階ではあるけどね。けど、証拠はあるよ」
「!?」
彼の発言に、再びユヅキは驚愕の色を隠せない。
証拠? そんなものが自分にあるはずがない。身に覚えはないし、そもそも自分だって被害者なのだから。
しかし余程の自信があるのか、彼は余裕の表情を崩さなかった。
「…何せ君の魔力と、ウォルエナの『首輪』の魔力は、全く同じものだからね」
「首輪…?」
「『首輪』というのは、魔獣に対して付ける主従の証だ。普遍的な魔法じゃないから、知らなく
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