第45話『絶望への誘い』
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襲う激痛に絶叫した。膝をついて蹲り、ひたすらに耐える。
そんな隙だらけの晴登を、ウォルエナが逃す訳もなく、残りのウォルエナ全てが晴登に襲いかかった。
「く…ああぁぁぁ!!」
まさに火事場の馬鹿力。過去一の勢いで巻き上がる暴風がウォルエナを四方八方に吹き飛ばす。
吹き飛ばされたウォルエナは、地面や壁に思いきりぶつかり、鈍い音を立てて動かなくなった。
荒い呼吸を繰り返して、晴登は己の生存を確認。
なんとか九死に一生を得た晴登は、左脚を引きずりながらウォルエナから離れるように走った。
「あ、あぁ…」
もはや歩くのと同等のスピードになってしまったが、晴登は全力だった。
今まで味わったことのない痛み。それが一歩を踏み出す度に電撃となって頭に伝わる。
ついさっきまで状況を楽観していた自分が馬鹿らしい。油断すれば一瞬で痛みを味わうのが、この理不尽な世の中の理だというのに。
「ゆ、ユヅキは…?」
だが、痛みによって頭が冷やされた。
この惨状がどれほどまでに危険なものか。それを改めて思い知らされたのだ。
未だにどこに居るのか不明だが、早くユヅキと逃げなければならない。
しかし、運命は非情であった。
晴登の真横の路地裏から、1頭のウォルエナが槍の如く飛び出してくる。突然の事態に、咄嗟に左腕で攻撃を防ぐのがやっとだった。
「あぁぁぁぁ!!!」
人間の腕1本、奴らには木の枝と変わりない物だろう。牙が二の腕辺りに突き立てられ、2度目となる激痛が頭に伝わった。グリグリと、牙で抉られる感覚を味わう。
「は、放せぇ!」
腕をもがれる前にと、後先考えない渾身の"鎌鼬"。
それはウォルエナの身体を両断し、胴体だけが地面に虚しく墜ちた。
逆に、変わらず意識の消えた頭部が、晴登の二の腕に喰らい付き続けている。
「はな、れろ…!」
右手を使って何とか引き剥がす。牙が抜けた瞬間にも、痛みが走った。左脚の痛みも合わさり、晴登は再び膝をつく。
その際、屍と化したウォルエナの残骸が目に入った。
「うぇ…」
右手で口を覆いながら、何とか嘔吐を堪える。
今まで意識しないようにしていたが、ここまで様々と見せつけられれば、さすがに気持ち悪さを感じた。
マンガとかで散々こんなシーンを眺めてはいるが、いざ実際に見ると変な想像が頭に働くのだ。自分が死ぬ瞬間とか・・・
「やめろ、考えるな…」
晴登は大きく深呼吸し、何とか意識を保つ。
だが依然と荒い呼吸は収まらず、何度も深呼吸をする羽目になったが。
「行かなきゃ…」
朦朧とする意識の中、晴登は立ち上がる。
無論、捜索を再開するためだ。
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