第45話『絶望への誘い』
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通りを見渡す。
その姿は無防備そのものであり、今ウォルエナの狩り場となっているこの大通りでは格好の獲物だった。
もちろん、そんな獲物を逃がすはずもなく、数頭のウォルエナは彼に集う。
「おいおい、群がってくんなよ。何も持っちゃいないぞ?」
両手をヒラヒラとさせ、危険はないと表明する男性。
しかし魔獣にとっては、その行為は本来の意味を持たず、威嚇としか捉えられない。
男性はそれを察しると、手を下ろしてため息をついた。
「ったく、後悔すんのはお前らだってのによ」
男性は臆することなく、群れの中へ足を踏み入れた。
殺意と、黒笑と共に。
*
「さて、ユヅキはどこだろう…?」
物陰に潜みながら、大通りを彷徨くウォルエナの様子を窺う晴登。その間も、ユヅキを捜す算段を模索中だ。
「大通りだけだったら単純で捜しやすいけど、路地裏にいるとなると・・・マジで厳しい」
この王都の土地面積の内、路地裏は約7割を占めるという。
もしそんな所にいられては、捜す行為自体が億劫だ。いざとなったら行くけども。
「ユヅキのことだから、きっと心配してるんだろうな・・・ん? 心配、してくれてるよな…? え、してくれてるよね?!」
思いがけない疑心暗鬼。それに釣られて、無意識の内に声が大きくなってしまう。
今まで2日間を過ごした仲だ。心配くらいはしてくれるだろうと、何とか自分で納得してみる。
だが一瞬洩らしてしまった大声は、とある災厄を引き寄せた。
「グルッ…」
「あ、やべ!」
晴登はその災厄に気づくや否や、猛ダッシュで逃げた。だが魔術は一切使っていないため、すぐに追いつかれる。
「ガウッ!!」
「うお! …鎌鼬っ!!」
跳びかかってくるウォルエナを、新技で何とか撃退。
だが、状況は一向に好転していなかった。
「また囲まれた…!」
「「「グルル……」」」
逃げる際に大通りに飛び出したせいで、全包囲をウォルエナに囲まれてしまう。
まさに自業自得。自分に甘え、声を張るのを許してしまったのだから。
しかしこうなった以上、突破するしか道はない。晴登は再び手刀を構え、新技の準備をした。
──だが、
「ガウッ」
「痛っ!!」
魔力を溜めようと気を逸らした刹那、1頭のウォルエナに左脚の太股を食らい付かれる。牙が深々と突き刺さり、脳天に痺れるように痛みが伝わった。
晴登は表情を歪めつつも、自分の脚に喰らい付くウォルエナを睨むと、
「こ、のぉ!」
痛みを堪え、必死な思いで魔力を振るう。
何とか齧っている奴は引き剥がせたが、晴登は絶えず
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