第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:彼方の陽だまり
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り、無理矢理に打点を高くしてから刈り取るような軌道で後続の首を蹴りで薙ぎ、また一人を無力化する。そのどこまでも冷淡で作業的な戦闘行為を、ピニオラは目に焼き付けた。
さながら嵐の如く、しかして命を奪わず、五人ものレッドプレイヤーは瞬く間に蹂躙される。
最後の一人の頭を捕らえる握力を緩めたことで、重量物の落下音を以て場に静寂が戻る。最後に念押しの意味合いか、スタン状態で身動きの取れない彼等の口に錠剤を押し込んで、より重篤な《麻痺毒》を盛る。彼等からの追撃によるリスクを回避した侵入者はピニオラの目的地である扉の前に立った。
ピニオラの計画にはない、イレギュラー。
最近の彼との接触を顧みても、更に根幹を辿って、彼の性格や行動原理を思い起こしても、この場に姿を現すこと自体が在り得ない。
彼――――《スレイド》という男は、自身と周辺の人物に関わりのない事件には、例え死人が出ていようとも、興味すら向ける事はないのだから。
それこそ、彼は幸運にも《笑う棺桶》によって誰かを失うといった経験をしていない筈なのだ。報復の可能性はない。ましてや攻略組に属する大手ギルドとも不仲である事をピニオラは既に知っている。この作戦に参加している公算さえ危ういだろう。
それでも、事実として彼は現れた。如何なる理由か、最深部まで潜入するほどの目的を帯びてさえいる。不可解極まる状況に当惑するピニオラ。その存在さえ知らないで、彼は最奥の広間へと続く扉を開押した。旧い蝶番の軋む音と共にゆっくりと開け放たれ、左手に片手剣をオブジェクト化させながら、繋がれた空間の先へと臆することなくスレイドは進入していく。
その後を追うピニオラが視認したのは、やはりPoHの姿だった。
乱雑に山積された木箱に腰掛けたその脇に、みことが意識を失っているのか横たわっている。どうやら最低限の約束は守られていたらしい。
「なんだ、意外な客が来たものじゃないか」
気さくな言葉が、スレイドに向けられる。
それでも、彼の後ろ姿は一切の動揺もなく、ただ静かに佇むのみ。
「おいおい、せっかく半年ぶりの再会なんだ。積もる話くらいあっても良いんじゃないか?」
返答はない。
まるで何もない空間に話しかけているような風情さえあるなか、PoHはフードの中で笑みを崩さない。
「わざわざ俺のところまで来たんだ。何もないってことはないだろう」
「…………………アンタには、恨みはない」
ようやく、スレイドは小さく呟く。
蚊の鳴くような掠れた声。しかし、その返答にPoHは笑みを浮かべる。
「だが、アンタと俺は相容れないし、生きていられると厄介だ」
「ああ、良いぜ。人間を殺すには最高に冴えた理由だ………それに、お前には見込みがある
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