第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:彼方の陽だまり
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たならば、ピニオラはみことの傍にて待ち構える者から入口に立った時点で視線を浴びることだろう。つまりは目に見えずとも自身の存在を声高に叫ぶも同義。そのシステム的なギミックを利用しないほどPoHは甘くない。
故に、ピニオラは一旦扉に背を向ける。視線の先にあるのは光点として確認が済んでいる一つの集団だった。彼女の見立てからして、此方を背に構えているのが笑う棺桶のレッドプレイヤー。最奥の幹部を護衛しているのか、遠くから聞こえる戦闘に向かう気配は微塵もない。この他の通路にも同様に護衛らしき集団が配置されてはいたが、例えばピニオラが通った通路の警備役であった筈の集団は彼女の放った小石の気配にざわめいた隙に呆気なく背後への通貨を許した。今回も同様に小石の音で、しかも警戒している前方ではなく守護するべき後方から、《投剣》スキルMod《意識攪乱》による反響音も駄目押しに併せれば、彼等は一応の安全確認をしてくれることだろう。彼等の手で扉が開きさえすれば、あとは有らん限りの速力を以てみことを確保しさえすれば良い。圏内に転移してしまえば、レッドプレイヤーでは追跡もままなるまい。そもそも捕縛作戦という形式で攻略組からの襲撃を受けた笑う棺桶には、ピニオラ達を追う理由など無くなってしまうのだろうが。
ともあれ、ピニオラは足元に無造作に生成される小石を一つ摘まむ。
隠蔽スキルが解除されないよう、モンスターを誘き寄せる時と同様に、最も効果的に作用する位置を見定める………
――――しかし、その視界の片隅で僅かに揺れた《来訪者》を目敏く捉えたピニオラは咄嗟に身を縮めた。
天井の、松明に照らされていない影の領域から零れた漆黒の雫のように床に落下したそれは、気味の悪いことに無音。縦横に通路の折り重なる多層構造故に、侵入経路こそ無数にあれど、かの人物は接敵についてはあまり頓着はしていないらしい。あくまでも道中の手間を省く程度の感覚だったらしく、むしろ意図的に存在を晒したかのようにゆらりと立ち上がった彼を目掛けて、見張り役たちが根底に押し殺していた嗜虐の笑みを浮かべながら、各々の武器を手に殺到する。
総勢五名。
迎え討つ――――とはいえ、侵入者なのだが――――彼は素手。ましてやおよそ構えと呼べる姿勢はない自然体。強いて言うならば両の腕を緩く開けるだけ。その緩慢な動作は、突如として凶悪なまでの変貌を見せる。
それは、ほんの擦れ違うような、刹那の交錯。
振り下ろされる片手斧、その柄を支える腕の可動部を目掛けて掌底が突き上げられる。
同時にあらぬ方向へと圧し折れた腕は武器を取り零し、そのまま組み付いては壁に衝突させて強引に《スタン》状態を引き起こす。
糸の切れた人形のように地に伏す斧使いを捨て置くや、黒のスーツに身を包んだ来訪者は壁を蹴
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