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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十三話 捕虜交換後(その1)
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こちらに視線を向けてくる。
ある者は物問いたげな、別な者は微かに咎めるような視線だ。前者は司令長官の容態を心配し、後者は具合の悪い司令長官の元に押しかけた私を非難しているのだろう。ザイフェルトがほっとしたような表情を見せるのも分かる。居心地が悪かったのだろう。そして彼の後から長身の女性士官が近付いて来た。
「閣下、司令長官の御具合は如何だったのでしょうか?」
「大した事は無いようだったよ、フィッツシモンズ大佐。時折笑い声を上げられたくらいだからね。具合が悪いというよりは少し疲れたのではないかな。捕虜交換では大分心配されたようだからね」
私の言葉にフィッツシモンズ大佐が安心したように頷いた。ワルトハイム中将、シューマッハ少将も顔を見合わせて頷いている。
「それでは私は自分の艦に戻らせてもらうよ」
私がそう言うと彼らが敬礼をしてきた、答礼を返し艦橋を出る。
艦橋を出て通路を歩き出すと直ぐにザイフェルト中尉が問いかけて来た。
「閣下、司令長官は本当に大丈夫なのでしょうか?」
「心配かな?」
「はい、余り御身体が丈夫ではないと聞いておりますので……」
「心配か……」
私の言葉にザイフェルトは少し俯いていたがゆっくりとした口調で話し始めた。
「……今閣下に何かあれば帝国はどうなるのか……。小官は平民です、ようやく貴族達からも不当な扱いを受ける事の無い世の中が来る、安心して暮らせる時代が来る、そう思えたのです。ですが、ヴァレンシュタイン司令長官に万一の事があれば……」
「……」
元帥閣下、お分かりですか? 直属の部下ではないザイフェルトまでが閣下の事を心配しているのです。閣下が居なくなった場合の事を考え、その未来に怯えたような眼を私に向けてくる。私が閣下に言ったことは大袈裟でもなんでもない、事実なのです。どうか、それを御理解してください……。
閣下の御命を狙っているものがいる。酷く厄介な連中のようだ、オーディンに着いたら直ぐにクレメンツとケスラー提督に相談する必要が有るだろう。それとフィッツシモンズ大佐とリューネブルク大将にもだ。
メルカッツ提督にも話さなければならんだろう。問題は閣下に万一の事が有った場合だ。考えたくない事だが想定だけはしておかなくては……。メルカッツ提督が司令長官になるが軍事面での影響は考慮しなくてもいいだろう。問題は政治面だ、補佐が要るな、ケスラー提督の補佐が要る。
だがそれでも弱い、三長官をまとめ、リヒテンラーデ侯と連携し改革派を一つにする……。難しいな、ケスラー提督でも難しいだろう。だが帝国が混乱する事だけは避けなければならない。どうしたものか……。
とにかく、オーディンに着いたらクレメンツとケスラー提督に相談しなければなるまい。閣下を狙っている敵が居る、今度は以前の
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