暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
縁起物で福を呼べ!
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う事?」

 一気に飲み干したジョッキを早霜に渡し、ビールを要求しながら此方に尋ねてくる足柄。

「昔から縁起物……つまりは幸運を呼び込むと言われる食べ物ってのは数多ある。その中には縁結びに効果があるとされる物もあるんだよ」

「つまり、それを食べて験担ぎって事?」

「まぁ、簡単に言えばそういう事だ」

 案外ウチの足柄はこういう話に弱い。験担ぎだとか占いだとか、そういう運勢を左右しそうな事が好きだと事前に姉妹達から聞き出しておいたのだ。

「ふぅん……悪くない話ね。じゃあ、それをお願いするわ!」




 そして15分後、出来上がった料理を前に足柄が固まっている。

「……ねぇ提督?」

「なんだ?」

「験担ぎの料理、なのよねこれは?」

「そうだが?」

「じゃあなんでそれが『スルメの天ぷら』なのよっ!」

 足柄の目の前には巨大なかき揚げのような姿となったスルメの天ぷらと、味付け用の七味マヨネーズが鎮座していた。

「あら、ご存知無いんですか?足柄さん」

 そう言って口を開いたのは早霜だった。

「私の生まれの舞鶴のある京都の近辺では、スルメは結納の品の定番なんですよ?」

 そう、スルメは当て字で寿留女とされて関西では結納の品とされる事が多い。そこに込められた願いは様々で、保存食にかけて食料に困らないようにだとか、お足(お金)に困らないように足の多いスルメを贈るとか様々な説がある。

「それに、スルメってのは噛めば噛むほど味が出るだろ?そう言う夫婦になってほしいと願いを込めて贈られるのさ」

「成る程ね、味のある夫婦に……か」

 そう呟いてクスリと笑った足柄は、まだ熱いであろう揚げ立てのスルメの天ぷらを手で解すと、七味マヨネーズを付けて口に放り込んだ。

 衣のサクサクとした歯応えの後に、僅かに油を吸って柔らかくなったスルメのクニュクニュとした食感がやって来る。そこに噛めば噛んだだけスルメの旨味が溢れ出す。そこにマヨネーズの酸味と七味のピリッとした辛味。合わない訳がない。そこに冷えたビールをキューっと流し込んでやれば、まさに至福の時だろう。

「あぁ〜…美味しい」

 上唇にビールの泡を付けながら、心の底から嬉しそうに笑う足柄。

「スルメも上等な奴を使ったからな。美味いだろ?」

 揚げたスルメはこの間勝の野郎が置いていった一夜干しだ。獲ったその場で捌いて海上で干す為、新鮮さと旨味が段違いに強い。漁師に伝がないと中々お目にかかれない逸品だ。さて、読者の皆にも作り方を教えないのは目の毒だろうから教えておくか。

《ビールの肴に!スルメの天ぷら》

・スルメ(一夜干し)※普通の干しスルメでも可:1杯

・天ぷら粉:適量


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