第五章
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「あっちでシャワー浴びることもあるし」
「そんなこと言ってたわね」
「それでお風呂に入ったら」
当時は相当に汚かったそこにというのだ。
「駄目でしょ」
「それでも入ってたんでしょ」
「入らない方がましね」
「シャワー浴びるだけだったからね」
湯舟には入らなかったというのだ。
「身体洗ってシャンプーで頭洗って」
「それでもよ」
「駄目なんだね」
「お風呂場とおトイレは特に奇麗によ」
納豆で御飯を食べつつだ、彩加は言い切った。
「三食しっかり食べてね」
「そうなんだね」
「そしてシャワーで済ませるよりもね」
「疲れを取る為にだね」
「お風呂の方がいいの」
湯舟に浸かる方がというのだ。
「肩や腰の為にね」
「そういえば最近肩凝りもないよ」
「それはお風呂のお陰よ」
「身体がほぐれてるのかな」
「疲れも取れてね」
「それでなんだね」
「そうよ、だから私もお風呂に入ってるのよ」
彩加は毎日だ。
「そうしてるのよ」
「僕も時々でも入る様になったから」
「その分だけ疲れが取れる様になったのよ」
「そうなんだね」
「そうよ、それでだけれど」
彩加は兄にあらためて問うた。
「何か言いたそうだったけれど」
「お風呂のことで」
「そう、何かあったの?」
「いや、入ったらね」
二週間ぶりにというのだ。
「鏡に僕が映っていたんだ」
「あの汚かった鏡に」
風呂場の鏡も掃除していなかったので汚れていたのだ、それで彩加はその鏡も怒りながら洗ったのである。ついでに言うと洗面所のそれも洗った。
「そうなのね」
「うん、それが不思議だったんだ」
「どう不思議だったの?」
「僕が映ってたけれど」
「汚れていたからあまり映ってなかったでしょ」
「いや、それがね」
耕太は妹にさらに話した。
「何故か身体が赤かったんだ」
「身体が?」
「うん、目も出ていてね」
顔からというのだ。
「舌も長くてべろんとお口から出ていて」
「舌もって」
「胸のところまでね」
そうした姿だったというのだ。
「僕こんな姿かなって思ってたんだ、その時日本酒かなり空けてたけれど」
「どれ位?」
「一升ね」
「日本酒も飲み過ぎたら糖尿になるから注意してね」
ここでもだ、彩加は厳しくこう言ったのだった。
「健康にもね」
「だからお酒はワインか焼酎なんだ」
「そうなの」
まさにという返事だった。
「しかも飲み過ぎない」
「一升は論外なんだ」
「死ぬわよ」
彩加は決まり文句も言った、しかも朝からである。
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